「買い手がいるから、暴力シーンが売れる」(2017年11月03日)

2017年4月30日付けコンパス紙への投書"Kekerasan dalam Sinetron"から
拝啓、編集部殿。テレビ局が連続ドラマ別名シネトロンの放送を開始したころ、「Si Doel 
Anak Betawi」「Keluarga Cemara」「Panji Milenium」などのような、日常生活を反映し
ていて世の中の関心を惹きつけることのできるクオリティの優れた番組がたくさん放送さ
れました。

ところが今やインドネシアのシネトロンのすべてに渡って必須条件になっているのが言葉
のものから物理的なものまで含めた「暴力」です。子供たちが暴力シーンの真似をするこ
とを、われわれのだれもが知っています。たとえば以前に、子供がテレビを見ることので
きる時間帯に「スマックダウン」という格闘競技番組が放映されていました。そして全国
各地の子供たちがテレビで見たシーンの真似をするようになりました。

その当時、わたしの仲間たちもテレビにかじりつき、ためらいなく学校でその真似をして
いたのです。ふざけてしていたとはいえ、歯が折れたり、歯茎から出血するといった事故
に至ることは珍しくありませんでした。その結果、世の中で大勢の人がその放送をやめる
ように要請し、あるいは少なくとも子供が見ない時間帯に放送時間を移すように要求した
のです。

そんな先例があるというのに、暴力シーンに対する世の中の懸念をまるで無視するかのよ
うに、たくさんのシネトロンでは暴力シーンがあちこちに織り交ぜられています。そのピ
ークとして2013年には「Si Biang Kerok Cilik」というシネトロンに焦点が当てられ、
インドネシア児童保護コミッションが討論会を実施しました。放送された7回のエピソー
ドを同コミッションが観察した結果によれば、物理的暴力シーンが45回、言葉による暴
力シーンが89回数えられたそうです。


最近のシネトロンでは、子供や若者たちに人気のある「Roman Picisan」が同工異曲です。
たとえばその番組のエピソード第40に少なくとも三回の物理的暴力シーンがあり、また
他人の所有物を盗んで隠してしまうシーン、そして問題の決着や他人を愚弄するのを目的
にした言葉の暴力もいくつか登場しました。

そのシネトロンが示している、問題解決のために威嚇的暴力的な言葉を用いるやり方はイ
ンドネシア社会が持っているムシャワラ(話し合い)を通してムファカッ(合意)に達す
る文化パターンに反するものです。
[ 西ジャカルタ市在住、アディナ・イ・イスディハル ]