「2018年最低賃金(後)」(2017年11月07日)

ところで、最低賃金が3百万ルピアを超えているジャボタベック地区の事業主が、人件費
を削減するために最低賃金の低い州へ移転する現象はもう何年も前から起こっている。移
転先の筆頭候補は中部ジャワ州で、最低賃金が150〜200万ルピア台の県市にある工
業団地が狙い目になっている。それがうまく行かなければ最低賃金が180〜200万ル
ピア台の東ジャワ州だ。

プラスチック製品業界は上流産業がバンテン州に集まっており、下流産業は西ジャワ州の
バンドン南部・タシッマラヤ・ガルッ、あるいは中部ジャワ州スラカルタ・スラゲン・ク
ラテン・スコハルジョ、また東ジャワにもスラバヤ・シドアルジョ・グルシッ・クディリ
・マディウンなどにセンターが見られる。上流産業の雇用は3千5百人、下流は25万7
千人とのことだ。

ところが工場移転というのは事業主・経営者の視点で判断されて行くケースがほとんどで、
たしかに首都圏から中部ジャワに移れば人件費が大幅に削減されて経営的に楽になるわけ
だが、しかしながら雇用されている者はかれらの視点でその現象を分析する。

中部ジャワに工場が移転してきて求人が起こる。しかし東ジャワにも移転してきて、そち
らでも求人が起こる。すると中部ジャワの労働者たちは東ジャワの求人に応募するように
なる。その結果、中部ジャワの求人がなかなか満たされないという現象が実際に起こって
いるのである。

中部ジャワ州の工場で人手不足が起こっているのは、繊維産業・履物産業・プラスチック
製品産業で、人材の争奪戦が繰り広げられており、結局は移転前に想定された人件費より
も高めになる傾向に陥っている。


その一方で、移転したくとも移転できない工場もある。最低賃金は企業の規模を一切斟酌
していない。大型工場に焦点を当てて最低賃金が定められたら、中小企業にはたまったも
のでない。おまけに、大型工場の外注仕事を引き受けている中小企業は移転することさえ
ままならず、生き残るがやっとという経営状態で長年働き続けているところも少なくない。
自動車産業はジャボタベック地区に集中しており、自動車部品業界はもろにその影響を蒙
っている。自動車部品中小企業会会長はその点に関する苦衷を訴えている。これまでもそ
の問題に関する議論は多々出されているものの、二本立て最低賃金に向けての動きが起こ
ったことはまだないようだ。[ 完 ]