「甘くないイミグレ法規違反処罰」(2017年11月10日)

中国人観光客がめきめきと増加した北スラウェシ州マナド市。今やかれらの観光ルートの
定番と化した観のあるトモホン在来市場は、地元民の伝統的食生活を垣間見れる場所とし
て興味津々のありさま。

オオコウモリ、犬、蛇、猫、森ネズミ、かつてはヤキ(黒猿)もあったが今では大っぴら
に売られなくなっている。ありとあらゆる野生動物が食べられるために売られており、中
には生きているのをその場で絞めて解体する場面もあったりするので、ショックを受ける
観光客もいる。

そのトモホン市場で貴金属装身具を販売していた中国籍の入国者を2017年5月6日に
北スラウェシ州当局が逮捕した。なにしろその中年男性はインドネシア語も地元言語もま
るで使えず、客とは身振り手振りと電卓で価格交渉するというスタイルだったから、だれ
が見ても外国人の違法ビジネスであるということがすぐに分かる。


この種の外国人はたいていイミグレーション法規の違反だから、収容所に入れてから国外
追放という処理が多いのだが、今回は刑事事件として起訴された。ときどきこのパターン
が適用されてインドネシアの刑務所に入れられることがあるから、イミグレ法規違反を考
えているひとは甘く見ないほうがよい。

9月25日にマナド地裁で開かれた公判で被告は判事の質問に答えて一部始終を物語った。
それによると、被告はインドネシアでの商売を計画し、何度かインドネシアを訪れて実行
計画を組んだとのこと。

トモホン市場で逮捕されたとき、被告はジャカルタで入国してから中国から持ち込んだ商
品に加えてジャカルタのパサルスネンでも商品を仕入れ、それらを携えてマナドへ飛んだ
由。最初はまあまあ買い手がついたものの、逮捕されたころはもうあまり売れなくなって
いたそうだ。品物はたいていが1〜2万ルピアの価格帯で、一日の利益は8万ルピア程度
だった。そんな利益では食べて行くのも難しい。宿は地元民の家の部屋を借りて住んでい
た由。

被告は到着時ビザあるいはビザフリーで入国したかと思いきや、ビザについてはD.21
2を取得していた。D.212ビザというのは商用マルチプルエントリービザで、一年間
の有効期限があり、一回の滞在が60日間で、その都度出入国を繰り返して一年間滞在で
きるというもの。但し、入国目的は;
観光、親族訪問・社会訪問、学術交換、短期研修、商談・売買取引・生産工程と製品の品
質チェック、非商業ベースのセミナー参加(セミナー自体の許可が別途必要)、所属組織
や事業所の会議参加、に限定されており、物品売買は許されていない。おまけにこのビザ
は基本的に身元引受人が招へいする形を取る必要があり、その辺りの手続きはどうやらで
っちあげでプロセスを通ったのではないかと思われる。

そのビザは外国人がインドネシア国内で物品販売をするためのものでないことを知ってい
たのか、という質問に対して被告はまったく知らなかったと返答したそうだ。被告の知識
はそのビザで一年間出たり入ったりできるということに限られていたように見える。
法廷で被告は監獄暮らしがつらいと言って涙を流し、悔悛の情を示した。食事は食べるこ
とができず、夜は蚊がいっぱいいて眠れず、そして同房の囚人がいろいろとちょっかいを
出してくるのだそうだ。

その日の事実確認と被告の陳述はそれで終わり、そして11月7日に判決公判が開かれた。
判事団長が下した判決は8カ月の入獄だった。