「世界最古の手形の絵(前)」(2017年11月20日) 南スラウェシ州マロス(Maros)にあるレアンレアン古代園(Taman Prasejarah Leang Leang) に入ると、巨石遺物があちこちに散らばっている。数万年前と推定される巨石遺物は、昔 のままの姿でそこに置かれているようだ。カルスト岩で作られたそれらの遺物は、マロス 〜パンケップ(Pangkep)カルスト地帯で見つかったもののほんの一部にすぎない。そのカ ルスト地帯は総面積43,700Haの南スラウェシ古代国立公園、別称バンティムルン (Bantimurung)〜ブルサラウン(Bulusaraung)国立公園に含まれている。 レアンとは洞窟を意味しており、カルスト地帯の例にもれず、たくさんの洞窟がそこにあ る。世界最古の手形の絵が、その中のひとつ、レアンティンプセン(Leang Timpuseng)で 発見されている。その発見のニュースは2014年のネイチャー誌に発表され、それまで 世界最古のものとされていたスペインのエルカスティーヨよりも更に2千年ほど遡った3 万9千9百年以上前のものであると判定された。 インドネシアのマロスにあるレアンティンプセンが世界最古のものだと世界の古代考古学 界が認めたにせよ、インドネシアの考古学者たちはオーストラリアのグリフィス大学と共 同で地域一帯の発掘調査を続行しており、その最古の手形の絵をサポートすると見られる 遺物がいくつか既に見つかっている。 その結果かれらは、現生人類の祖はアフリカから西方へ移動したというヨーロッパ考古学 界の通説に反して、東方へも拡散してその一部がスラウェシに居住したとの説を立ててい る。 インドネシアで学術的利害は経済的利害と衝突するそうだ。それは南スラウェシ州だけで なく、全国いたるところで同じことが起こっている。南スラウェシの場合、カルストはセ メントの原料供給元と見なされているのだが、このマロス〜パンケップカルスト地帯に関 する限り、考古学者はそれを手付かずで残したいと考えている。人類の祖先が、そして南 スラウェシ住民のルーツかもしれないひとびとがどのような暮らしをしていたのか、それ をひもとく鍵が見つかっているのだ。このカルスト地帯はそのブラックボックスなのであ る。それがすべてセメントの材料にされてしまえば、すべては闇の中に戻されてしまう。 [ 続く ]