「イージーな税増収案」(2017年11月21日)

2018年度ジャカルタ首都特別区支出予算が2017年度改定予算の71.89兆ルピ
アから7.2%アップするため、都議会は17年11月16日に総会を開いて財源確保の
ために地元自治体収入増加に関する方針を議題に乗せた。

地元自治体収入のメインを支えているのは38.12兆ルピアにのぼる地方税であり、2.
87兆ルピアの自治体収入増はやはり地方税の増収でカバーされなければならない。議事
の焦点は地方税の増収をどのような方針で進めるのかという点に収束した。

税収増のテクニカルな方策は、ラフに言えば「取れるところから取っているものを増やす」
という税深化方式と、「これまで税を徴収していなかったところに課税対象を広げて行く」
という税拡大方式のふたつに絞られて行く。


首都ジャカルタの地方税の主な項目はホテルレストラン税、土地建物税、自動車税、自動
車名義変更税、駐車税、道路照明税などで、議事の中で税率引き上げが可能と見られる項
目について、意見が述べられた。

自動車名義変更税が市場価格相場の10%から15%に、都民に対するPLNからの電力
使用料金請求の中に含まれている道路照明税を2.6%から6%に、駐車場運営事業者か
ら徴収されている駐車税を20%から30%に、あるいは商業地区にある土地建物の土地
建物税をもっと高い税率に引き上げるといった意見がそれで、それらに関する話し込みを
都議会が都庁と行うことになった。

もしそれらの税率アップが困難だという結論になった場合、都議会は財源確保のために都
庁に対して、これまで以上に厳格な徴税姿勢で臨むよう発破をかけることになる。


徴税現場の実態はさまざまな要素が絡み合っていて、適切な税法規解釈・正直な申告・正
しい税額算出・徴税吏の着服排除といったことがらが厳格に行われないときに税収の水漏
れ現象が起こる。「取れるところから取っている」のはそれらのハザード要因をくぐって
来たあとの結果であり、水漏れがミニマイズされている状況がインドネシアに存在するな
どとはだれも信じていない。

たとえば借家やコスコサン(借室)には地方税がかけられており、その事業による収入と
は無関係に徴税が行われる。現実に、わざわざ正直に申告して自分の金を減らしたくない
人間のほうが世の中には多いため、この徴税については調査員を街中に巡視させてしらみ
つぶしに借家やコスコサンを探し回らせる必要がある。あるいはホテルレストラン税の分
野でも、レストランの中には客が100万ルピア分飲食したというのに、申告金額を60
〜70万ルピアに減らして行っているところがあまた存在している。

おまけにそのような納税忌避者は税務調査〜不足分納税命令を与えても、素直に服従して
実行しようとせず、無視する者が少なくない。そうなると、今度は納税命令書の実行につ
いての管理とフォローが必要になってくる。

「取れるところから取っている」というのは言い換えるなら「取りやすいところからだけ
取っている」ということになり、都議会の言う通り「厳格な徴税姿勢」でその行政を執行
するなら、税率引き上げなどまだまだ必要がないということになるかもしれない。インド
ネシア経済はここ数年冷却気味で、2018年もまだ活況が戻ってこないという説もある
中で、一部ではあるにせよ税率引き上げに対して賛同できない議員もいるようだ。