「村々に転がっている歴史遺産」(2017年11月22日)

中部ジャワ州マグラン(Magelang)県サラム(Salam)郡ティルト(Tirto)村はチャンディボロ
ブドゥルから東に12キロ離れた場所にある。その一帯には古代に作られた石像が、あち
らこちらにゴロゴロしている。ティルト村はチャンディグヌンウキル(Candi Gunung Wu-
kir)にも近い。ただしチャンディグヌンウキルがあるのはカディルウィ(Kadiluwih)村だ。
あるとき、よそ者の集団がその石像を盗もうとしたため、村役場に集めて保管することに
なった。レンガ製作場近辺で見つかったものが多いが、土の下3メートルの深さから掘り
出した物もある。縄をかけて引っ張り上げ、ピックアップトラックに積んで村役場まで運
んできた。2007年から開始されたその作業で、今では村役場の裏に33体の遺物が集
められている。

像は既に完璧な形をとどめていないが、中にはドゥルガ像であることが明白に分かるもの
もある。週末になると、役場のひとびとが総出で像の掃除に精出している姿を目にすると
きもある。役場の裏にガゼボを建てて、石像を雨や日射から守ろうという計画を村役場は
既に立てている。


ティルト村から25キロ北西にバニュワギ村がある。ここの村役場も13体の石像を保管
している。padmasana(蓮華座像)、umpak(柱の台座)、yoni(女陰)、チャンディの壁
の一部などがその内容だ。それらは元々、道端や水田、墓地、民家の庭などに転がってい
たもので、盗もうとする者があったり、壊れかかっていたため、見るに見かねて村役場に
集めてきた。中には盗まれて姿を消したものもあったそうだ。回収するに際しては、とて
も重いそれらの石像を動かすだけでも20〜25人の人力を使い、荷車に積んで役場へ運
んできた。

村役場の建物は現在改築中で、なんとそれらの石像を置くための部屋を増築しているので
ある。完成すればミニ博物館になるとのこと。この改築は百パーセント村の資金を使って
いて、他からの援助はまったく受けていないそうだ。

バニュワギ村はそれらの歴史的遺物を村の資産として保管する届けを県庁に出し、その認
可を得ている。ボロブドゥル保存館の考古学者はそれらの古マタラム王国の遺産と見られ
る歴史遺物への関心と保管の努力を称賛し、マグラン県が当時の文明文化の中心地であっ
たことを地元の若者たちがもっと認識できるような活動につなげてほしい、と語った。

生まれ育った環境の中に転がっている歴史遺産を地元民の多くは、故郷というものを形成
しているパースペクティブの一部として見ているだけかもしれない。学術的な解説が加え
られることで、ひとびとははじめて「歴史」という視点からそれらを眺めることができる
ようになるのだろう。