「復活するハルコグロドッ(前)」(2017年11月23日)

ジャカルタのコタ地区商業中心街グロドッ(Glodok)で昔から由緒ある威容を誇っていたハ
ルコ(Harco)ビルが無人の廃墟と化したのは2013年のことだ。1970年代に電気製
品電子部品などの大型小売センターとしてオープンしたハルコビルは、2012年8月に
出火し、ほぼ一年後の7月に3階が崩れ落ちて廃墟と化した。

1970年代のジャカルタで、たいていの電気製品や電気電子部品アクセサリー類が一カ
所で探せるこのハルコビルはたいへん便利な場所であり、わたしも当時足を何度もそこへ
運んだものだ。その在庫品の豊富さは当時のジャカルタで他に例を見なかった。パサルス
ネンにしろ、ブロッケム(Blok M)にしろ、家電品販売店が集まっている一角はあっても、
そこで見つかるのは売れ筋商品だけで、ましてや部品やアクセサリー類はそのとき店にあ
った在庫を買うしかない、というのが普通のありさまだったのだから。

ただ残念なことに、ビル内は何百という店舗に分かれていて、何軒もの店あるいは売場を
はしごして品物を探し、そのたびにタワルムナワルをしなければならない非効率さにうん
ざりさせられたのも事実だが、いかんせん資本力の弱い小売商店が商品在庫の限界をあか
らさまに見せているその姿こそがインドネシアの本質であるということに当時の若僧はま
だ気付かなかったということだろう。


1980〜90年代がハルコの黄金時代だった。90年代にアグンスダユグループがマン
ガドゥアに同工異曲の電気製品を主体にするモールを設けてハルコマンガドゥア(Harco 
Mangga Dua)の名前を冠したものの、販売店も消費者もハルコグロドッからなかなか離れ
ようとせず、複数のビルから成るハルコマンガドゥアはいつまでも閑古鳥が鳴く風情であ
ったことを記憶している。ハルコグロドッの閉鎖が、ハルコマンガドゥアに追い風の吹く
契機になったのだろうか。

ハルコグロドッの黄金時代は海賊版DVD/VCDの時代に重なる。ありとあらゆる種類
の電気製品からオーディオ製品、ビデオゲーム機器、そしてアクセサリーや部品に特化し
た店が並ぶ中で、そんな間に海賊版DVD/VCDが狭い売場スペース一杯に並べられて
売られていた。

その廃墟になったハルコビルをアグンポドモロランドが2013年に買収し、ビルの建て
直しが進められて、今やほぼ完成の状態になっている。最初は2017年10月にオープ
ンの予定だったが、2018年初に延期された。

昔は3階建てだったハルコビルは新たに6階建てになり、その6階建ての商業ビルの上に
更に4階建てのアパートメントがそびえている。新ハルコビルの1階から4階までは昔な
がらの電気店が集まるブロックで、その上のふたつのフロアには重電や機械類および建築
資材の店が集まることになっている。[ 続く ]