「続不死身の術(後)」(2017年12月01日)

そして今度はボゴール県で中学生が刃物を使った決闘戦で死んだ。ことの発端は2017
年11月18日にフェイスブック上で起こった侮蔑嘲笑書き込みの応酬から始まる。多分
そこで15歳の中学9年生アフマッが自分は不死身の術を身に着けていると大見えを切っ
たのだろう。応酬の相手になった別中学の生徒DM16歳が、「だったら術比べをやろう
じゃねえか。度胸はあんのかよう!」と挑戦したらしい。

そして互いの学校から三人が出て、それぞれ一対一で決闘することが合意された。不死身
の術比べなのだから、刃物で相手を斬るのは当たり前のことだ。かれらは11月20日に
決行することを約束したが、アフマッ側は約束の場所に来なかった。再びフェイスブック
上でひと悶着起こったに違いない。


このままでは「女の腐った卑怯者」の烙印が押される。窮地に立たされたアフマッは11
月24日16時半にボゴール県ルンピン郡ゴナン村ルイハラン部落のゴム林で決行するこ
とを約束し、ついに両者は相対したのである。

先にアフマッが鎌でDMに斬りかかったが、DMの身体には傷がつかない。何度やっても、
DMの肌に血の筋一本も現れない。しばらくアフマッの好きにやらせてから、DMは「今
度はオレの番だぞ。」と持ってきた鉈を手にした。するとアフマッはきびすを返して脱兎
のごとく逃げ出したのである。

DMの目が血走らないわけがない。「おのれ、逃がすものか。」とDMは全速でダッシュ
し、追いすがりざまにアフマッの背に鉈を振り下ろした。アフマッの背が割れて、血が噴
出する。DMは更に鉈を振るって数回アフマッを斬った。アフマッはその場に倒れて動か
なくなる。アフマッ側の他のふたりは、そのシーンを目にするや、全速力でその場から逃
げ出した。DM側のもうふたりは、呆然とそのシーンを見ているだけだった。

決闘の応援に来ていたアフマッの学校仲間たちがアフマッに駆け寄り、ルンピン保健所へ
運んだ。DM側の三人とその応援の学校仲間たちは、それを尻目に引き上げて行った。


保健所では救急措置が執られたが、アフマッはそのとき既に出血多量で死亡していた。保
健所が出した死亡診断書には、背中・腰・右上膊部・右腕下部に刃物傷があった、と記さ
れていた。

警察が捜査を開始したが、アフマッの家族は被害届を出そうとせず、法的措置が進められ
るのを拒み、アフマッの司法解剖さえ拒否した。警察は家族を説得して、半ば強制的に司
法解剖を行っている。また殺害者となったDMは警察に捕らえられて取調べを受けている
が、DM側の他の決闘者ふたりは逃亡しており、警察が行方を追っている。

警察はそのふたりに自首するよう関係者を通じてよびかけたが、自首する気配がまったく
見られないことから、指名手配にかけることにした。指名手配されれば、年齢には関係な
く、本名と顔写真が公表される。[ 完 ]