「風の目?(3)」(2017年12月07日) ムラユ文化地域に影響をもたらした西方の文化ではどうだろうか? サンスクリット語に由来するヒンディ語は次の通り。 Uttar disha Ishanya Poorva Agneya Dakshin Nairutya Paschim ayavya あるいはアラブ語。 Al shamal Al shamal Al sharqe Al sharq Al ganoob Al sharqe Al ganoob Al ganoob Al gharbe Al gharb Al shamal Al gharbe そうやって比較して見る限り、サンスクリット語の北を意味する「uttara」(ヒンディ語 では変化してuttarとなっている)がムラユ語の中に取り込まれたのが明白だ。 ムラユ語の体系の中では、もともと「laut」が北の方角を指す言葉として使われていたら しい。だから北東と北西には「laut」の語が添えられているというウィキの説明になって いる。おまけにジャワ語の「lor」もムラユ語の「laut」に関係する意味を持っていると のことである。 その反対の南については、エティモロジー面の説明が手に入らない。「selatan」は「se- lat」+「an」と考えられることから、北の「laut」に対する南の「selat」という対比は われわれの知性を揺さぶってくれるものだ。「selat」とは陸地に挟まれた狭い海、いわ ゆる海峡を意味しているのである。ということは、「laut」はオープンシーを意図してい るのが明白ではあるまいか。 そして追い討ちをかけるかのように、「daya」が陸地を意味していたという説明が付け加 えられている。北に広い海があり、西あるいは少なくとも南西に広い陸地があって、南は 海峡をなしているという地勢図がわれわれのイメージに浮かんでこないだろうか?いった い、どこの地域に住んでいたムラユ族がこの八方位に関わる言葉を生んだのか、という興 味深い謎がいまわれわれの眼前に転がっているのである。[ 続く ]