「前途多難なバリ島観光業界」(2017年12月07日)

バリ島グラライ空港が閉鎖されるより先に、諸外国のデンパサル空港行きフライトにキャ
ンセルが続出していた。風向きの関係でデンパサル空港より先にロンボッ空港が暫時閉鎖
された。そしてついにグラライ空港が閉鎖されるに及んで、航空会社は飛ばすかどうかの
自主判断をしなくてもよくなった。インドネシアでの報道によれば、アグン山の噴火で足
止めを食らった外国人観光客は6万人にのぼったそうだ。

かれらが出国できなくなったのと表裏一体をなして、バリ島旅行を計画していたもっと多
数の外国人が旅行を取り消した。アグン山の火山活動が完全に停止するまで、その事態は
継続すると見られている。だがそれでは困るバリ島住民も大勢いるのである。なんとか起
死回生の秘策を練って、かまどの火を絶やさないようにしなければならないのだ。


ギアニャル県のアイ?シュワリヤ・エクスクルージョン・ヴィラズはグラライ空港が閉鎖さ
れた17年11月27日、ソーシャルメディアに広告を載せた。「バリで立ち往生してい
る旅行者の皆さん、宿泊料金を通常の一泊120万ルピアから60万ルピアに値下げしま
す。」

そればかりではない。宿泊客にはアグン山噴火観測ツアーをオファーした。アグン山から
東南東におよそ15キロ離れたルンプヤン寺院(Pura Lempuyang)を訪れて火山を遠望する。
噴煙をバックに写真撮影をする。その半日ツアーが四輪車一台で45万ルピア。あるいは
アグン山から東に16キロ離れたアメッ(Amed)海岸のサンセットポイントへ。こちらは四
輪車一台で50万ルピア。


この戦略はヒットした。かなりの外国人観光客がアイシュワリヤを訪れたとのことだ。
カランガスム県クブ村タニャルの宿泊施設ウマティンジュン(Umah Tinjung)も宿泊料金半
額のプロモーションを打った。宿からアグン山山頂が明瞭に見える。やって来た宿泊客は
片手の指に満たなかったが、一室一泊60万ルピアが半額になっても、全室空室よりはマ
シだ。

その客の中に、マレーシアとシンガポールで商業カメラマンとして活動しているイギリス
人がひとり、混じっていた。かれは噴火したアグン山を撮影するためにわざわざバリ島へ
やってきたのだ。かれは日の出と共に起きて、カメラとドローンの用意を始めた。


一方、ギアニャルで営業している食事ワルンのオーナーは、その日さんざんな事態に陥っ
て頭を抱えた。ふだん一日110人ほどの客が食べにくるはずなのに、その日来た客数は
わずか10人。明日からどうやって客を呼び込もうかと、かれは知恵を振り絞っている。

グラライ空港には、フライトがキャンセルされた乗客のチケット払い戻し手続き、ビザの
延長手続き、出国するために予約し直したフライトのコンファメーション待ちなど必要な
プロセスを抱えている観光客がまだいる。

11月29日15時にグラライ空港は再開された。ふたたびフライトを飛ばすかどうかは
航空会社の手の中に戻された。アグン山の火山活動はまだ続いている。