「バリ島観光客はジャワに向かう」(2017年12月15日)

アグン山噴火でバリ島を訪れる観光客の数が激減しており、地元観光業界は収入が5分の
一から10分の一程度まで低下して青息吐息のありさまのようだ。しかしグラライ空港に
入国する外国人観光客は平常期の一日平均1万3千人が6千人まで減ったものの、国内観
光客は一日平均9千人があまり変化していないらしい。それに合わせてヌサドゥアのIT
DCは観光客誘致の広告宣伝をこれまでの国外85%国内15%から国外60%国内40
%に配分を変更した。しかしインドネシアにやってくる外国人観光客の数が激減している
わけではない。ジャカルタで入国してジャワ島を旅行し、最後にバリへ、というひとも少
なくないのだ。

そんな人たちは状況に合わせて最後のバリをカットするから、途中のジャワ島内での日程
を緩めてバリに予定していた滞在日数をそちらに回すという調整を行う。その結果得をし
たのがヨグヤカルタ(Yogyakarta)やバニュワギ(Banyuwangi)、マラン(Malang)、そしてス
マラン(Semarang)だそうだ。

「オランダ・スペイン・イタリアなどの観光客は独自の観光ルートを持っているんですよ。
かれらはジャカルタへ入国してから、ボゴールやバンドンを訪れ、そのあとジョグジャに
来ます。そしてジョグジャから東ジャワを通ってバリへ行くというのがそのルートです。
アグン山の噴火でバリへ行くのをやめたため、ジョグジャで滞在日数を増やして、周辺の
観光をしていますよ。」インドネシア旅行代理店協会ヨグヤ支部長はそう語る。


普通、観光客は一泊してヨグヤカルタを去るのだが、今は二泊するケースが増えているそ
うだ。おかげで、これまであまり観光客が訪れなかったスマランに足を伸ばすひとも増え
ている。ジョグロスマルが観光目的地としてプロモートされる絶好のモメンタムだ、と支
部長は喜んでいる。ジョグロスマル(Joglosemar)とはジョクジャ(JOGja)+ソロ(soLO)+
スマラン(SEMARang)広域経済地区の別称だ。

マランとバニュワギも観光客の増加に大わらわだ。バニュワギは11月終わりにバリ島グ
ラライ空港に発着陸できなくなった航空機が回って来たことで、観光客が激増し始めた。

バニュワギは観光客誘致が顕著に伸びているとはいえ、外国人観光客が押し寄せるのは週
末やフェスティバル開催時だったのが、今やそんな変動要因は消え去ったかのようだ。ホ
テルは週を通して盛況で、現地ツアー代理店もレンタカーも、ツアーガイドまでも注文が
ひきも切らない。ツアーガイドは一日に何件も掛け持ちし、大忙しの態。マランはそれと
反対に、国内観光客の姿が顕著だ。観光先はブロモ山やバトゥがメインを占めている。ど
の観光業界も、その状況が17年の年末から18年の新年にかけてのホリデーシーズンま
で継続するものと見ている。


スラバヤのタンジュンペラッに寄港したシンガポールの観光クルーズ客船ゲンティンドリ
ーム(Genting Dream)号は次の寄港地であるバリ島目指して12月12日に出港した。と
は言っても、当初予定されたバリ島南部のブノア(Benoa)港には入らない。バリ島北海岸
部のブレレン(Buleleng)県にあるチュルカンバワン(Celukan Bawang)港に立ち寄るのであ
る。

ゲンティンドリーム号が運んできた2,561人の乗客が普段からあまり人口稠密でない
北岸部に降りれば、ここでも地元観光業界は大わらわになるにちがいない。南北の経済不
均衡を均す平準化が昔から叫ばれているものの、現実にはなかなかその方向に足が踏み出
されないバリ島にとって、バリ第二空港がそのモメンタムとして期待されているとはいえ、
「そんなものを待つまでもない。ほら、この通り。」とあたかもアグン山がウインクして
いるかのようだ。