「機内に腐臭が・・・」(2017年12月18日)

かつて東ヌサトゥンガラ州クパン市のエルタリ空港で、こんな事件があった。

2014年12月16日午前6時発ルテン行きフライトに妻のクリスティナ・マリア・ノ
ニさんとふたりで乗り込んだクパン市住民のアロイシウスさん53歳は、キャビンの中に
きつい腐敗臭が漂っているのに驚いて乗務員に苦情した。「こんな悪臭の中に座らされて
いたら、わたしゃ死んじゃうよ。」

するとトランスヌサ航空のそのフライトに乗務していたスチュワーデスふたりは、すぐに
機長に報告しに行った。そして5分後に戻ってくると「今すぐ、この機内から出てくださ
い。」ときつい口調でアロイシウスさんに言う。口喧嘩が始まるのも当然だ。機長は乗務
員に、「そんな苦情を言う乗客は降ろしてしまえ」と命じたそうだ。

アロイシウスさんは怒り心頭に発した。「あんたたちにわたしを降ろす権利などあるもの
か!わたしゃ絶対に降りないぞ。」

スチュワーデスはタラップから地上にいる男性職員を呼ぶ。数人の地上職員が入ってくる
と、かれらは力ずくでアロイシウスさんを機外に引きずり出したのである。

スチュワーデスと男性職員たちはアロイシウスさんをターミナルビル内まで連れて行って
解放し、この夫婦の航空券を返してから「二度とトランスヌサ機に乗らないように。」と
捨て台詞を残して戻って行った。

アロイシウスさんはその事件を州警察に訴えているが、その後どうなったのかは報道記事
が見つからないためによくわからない。


2017年12月10日、エルタリ空港に到着した機内の貨物室に強烈な腐敗臭が漂って
いるのに空港側は顔をしかめた。遺体がひとつ運ばれてきているのだが、その柩が悪臭の
源であり、遺体保存処理がどうなされていたのかよくわからないものの、既に保存効果が
消滅しているのは明白だ。

調べによってその遺体は東ヌサトゥンガラ州ララントゥカ出身のヘンドリクスさん48歳
のものであることが判明した。普通なら、そのまま運送業者によって出身地の自宅へ陸送
され、葬儀が営まれることになるのだが、悪臭と腐敗菌の公害を振りまいてはならないと
の判断によって遺体の運送は延期され、遺体はクパン市ヨハネス地方総合病院へ送られて
保存処置を受けるよう手配された。

ヘンドリクスさんは不法海外出稼ぎ者だった。公式出稼ぎプロセスを経ないままマレーシ
アへ海を渡り、セランゴールの農園に肉体労働者として雇われた。ところが11月26日
にマレーシア警察の不法就労者検問の手がその農園に入り、不法就労者口入仲介業者に逃
げて隠れるよう命じられたために、かれはひとりでパームヤシ農園の奥深くに逃げ込んだ。
その日夜中にかれを探しに行った農園の仕事仲間が、かれの遺体を発見した。

東ヌサトゥンガラ州は合法非合法海外出稼ぎ者の苗床であり、遺体となって帰郷するひと
の確率も高い。もちろん、アロイシウスさんが嗅いだ腐臭の源が何だったのかについて言
明している言葉はどこにも現れていない。