「犯罪理解の十方法(後)」(2017年12月22日) 6.もうひとつ犯行者に関連して、犯罪歴の有無に着目すること。特に、刑務所を出獄し てきた前科者かどうかということだ。これまでの経験則によれば、出所したばかりのかれ らは昔の犯罪グループのところに戻って、犯罪活動を再開する。但しこのポイントについ ては、先入観のないニュートラルな見方が必要になる。 7.更に犯行者と被害者に関連するものだが、かれらは犯罪サブカルチャーを持っている と目されている社会集団の出自なのかどうかという点だ。(犯罪サブカルチャーとは、特 定犯罪について、ある形態における犯罪行為を可とする価値観をひとつ、もしくは複数持 っていることを意味する。) そしてまた、犯罪汚染地区の出身だったり、今そこに住んでいるかどうかということも。 もし両者が犯罪サブカルチャー社会集団に属しており、同時に犯罪汚染地区住民であるな ら、そうでないケースよりはるかに容易にその事実を受け入れることができる。 しかし犯行者もしくは被害者がこれまで犯罪とは無縁と見られてきた背景を持っている場 合、われわれはその事実を受け入れることに躊躇してしまう。たとえば犯行者が社会的に 尊敬されている人物だったり、高い社会ステータスや高学歴だったりした場合で、被害者 のプロフィールについても同様だ。 犯行者に関する長期の深い観察を経てわれわれが達した理解では、暴力犯罪実行者の多く は初犯でなく、そして計画なしに反射的にそれを行っているのである。 8.妥当で正確な住民管理基礎データと犯罪基礎データによって、ひとりの人間の犯罪歴 を記録することができる。残念なことに、われわれはそれを持っていない。それがあるな ら、犯罪が発生したときに容疑者の選択の幅を広げることができる。 9.マスメディアの状況。メディアに報道記事欠乏状態が起こると、犯罪事件のニュース がトップ記事に浮上する可能性が高まる。犯罪関連のコラムや特集番組を持っているとこ ろですら、数では圧倒的多数を占めている雑魚犯罪事件を報道するよりも過激な暴力犯罪 事件が待ち望まれている。これがメディアのオーバーアンプリフィケーション傾向と呼ば れるもので、容易に世間一般を恐怖のるつぼに投げ込んでいる。 10.暴力犯罪に対する社会の姿勢。それは測定可能なのだ。犯罪への怯えに襲われた社 会はますます容易に無力社会化し、最終的に病的社会、つまり無法社会となる。暴力犯罪 は、それが戦慄のニュアンスを生み出して、自分の身にも起こり得ると読者や視聴者に思 わせることを思えば、理論的に恐怖感を培養する潜在性にきわめて満ちていると言えるの である。[ 完 ]