「ロキシーの変貌(前)」(2018年01月09日)

携帯電話機を買うならロキシー(Roxy)というのがジャカルタでは常識になっていた。数十
年前からそうだったのだが、今や様変わりしてしまった。2010年に入ったころから、
携帯電話機本体から携帯電話機アクセサリーや部品へのシフトが始まり、マーケットの様
相は完全に逆転した。ロキシースクエア(Roxy Square)の売場オーナーのひとりによれば、
2010年より前は7:3の比率だったが、今では3:7になっている、とのことだ。

メーカーや代理店がモールに直営店を出す方式が活発化し、また販売センターが都内のあ
ちこちに出現するようになった上、オンラインショップも地歩を得るようになってきたこ
とが、ロキシー変質の原因だった。その結果、完成品を求めてやってくる消費者が減少し、
再販するために仕入れを行う小売業界者が増加したのである。

扱い商品は変化したが、品ぞろえの豊富さと価格の安さは相変わらず国内でナンバーワン
だ、とその売場オーナーは強調している。


ロキシーは西ジャカルタ市と中央ジャカルタ市の境にある。中央ジャカルタ市のハシムア
シアリ通り(Jl. K.H. Hasyim Asyhari)と西ジャカルタ市のキヤイタパ通り(Jl. Kyai Ta-
pa)がつながるエリアで、トランスジャカルタバスのハルモニー(Harmoni)停留所からグロ
ゴル(Grogol)経由でカリドゥルス(Kalideres)に向かう第3コリドールがそのふたつの通
りを走っているから、グロゴルからでもハルモニーからでもアクセスすることができる。

トランスジャカルタバスを使うなら、スンブルワラス病院(RS Sumberwaras)停留所で降り
て、東向きに2百メートルほど歩くとロキシースクエア、更に4百メートル東行すればI
TCロキシーマス(Roxy Mas)に到達できる。そのロキシースクエアとITCロキシーマス
が全国に名の知られた携帯電話機のメッカだったのである。


流通機構の一歩上流に上がってしまった感のあるロキシーだが、インドネシアには個人消
費者を相手にしない卸専門店というものは存在しない。卸ビジネスで成り立っている店で
も、一個だけ買いたいという個人消費者を門前払いすることはまずしないのである。

もちろん、その店の方針としてまとめ売りをしている商品はあるだろう。だからそのまと
められたパックを崩すようなことをするかどうかというのが問題なのであって、卸だの小
売だのという話が取引の方向性を決めるようなことにはならないのである。おまけに価格
も、系統の異なるロジックで処理される。まとめられたパックを崩してくれる場合、単価
が高くなって当然というのがインドネシアでは常識になっている。インドネシアの商取引
文化には、あくまでもタワルムナワルが原理の位置に置かれている。

ロキシーで販売されているアクセサリーや部品類のほとんどは中国製だ。中国製だからと
言って、すべてが「廉かろう悪かろう」というベタ一面の低品質商品ばかりではない。そ
れなりの品質と価格というものも存在する。

だから店と購入者の間では、品質に関する独特の術語が使われている。「biasa」はノー
マル品質、そこから順繰りに「KW satu」「ori Tiongkok」「ori 99 persen」「ori 100 
persen」と品質が下がって行く。

商品の仕入れにやってきている購入者たちは、ここの値段はどこよりも廉いと太鼓判を捺
す。メーカーや代理店の直営店で売られている似たような品物の価格とは比べ物にならな
いそうだ。[ 続く ]