「金持ちになるおまじない(後)」(2018年01月13日)

警察が捜査に乗り出し、墓を暴いた犯人が18年1月5日に逮捕された。犯人はスヘンド
ラと一緒に、四カ月前から同じムソラで毎晩泊まっていたモッ・イルパン26歳であり、
そのふたりは親友の間柄だったのである。イルパンは12月29日未明に前日埋葬された
スヘンドラの墓を暴いてポチョンのひもを手に入れた。何のためにそのようなことをした
のか、という警察取調官の質問にイルパンは、ポチョンのひもを持っていると金がどんど
ん転がり込んでくるという話を信じたからだ、とその動機を明らかにしている。要は、ポ
チョンのひもは金運を高めるためのおまじない効果があるという俗説をイルパンは信じて
いたということのようだ。遺体がだれであろうと、何曜日の何時に亡くなったひとであろ
うと、あるいは何曜日の何時に墓を暴いて手に入れようと、そんな条件は何ひとつなくて、
ともかくポチョンのひもを持っていれば金が回ってくるというのが、その俗説の内容だ。

だからイルパンは、親友のスヘンドラが病気で亡くなったとき、赤の他人の墓を暴く勇気
はなくとも、親友だったら許されるのではないかと考えた可能性が高い。あるいはイルパ
ンが生前のスヘンドラに何らかの霊性を感じていたのかもしれない。


この他人の墓を暴いてポチョンひもを盗む行為を行う者はインドネシアに決して少なくな
いようで、中には大学卒の人間がビジネスで成功するように念願して盗掘を行ったりして
おり、この俗説はインドネシアでかなり世間に流通しているもののひとつになっているよ
うだ。

イルパンも定職と定居のない人間で、普段は乗合バス「アンコッ」のソピルテンバッ(sopir 
tembak)をしていた。だからスヘンドラのポチョンひもを持っていれば、自分のアンコッに
客がぎゅうぎゅう詰めになるような妄想を抱いたのだろうが、現実は厳しかった。増える
どころか、ポチョンひもを持ってアンコッの運行を行ったものの、水揚げは逆に減ってし
まったのである。一日のトライで逆運かもれないと思ったかれは、結局二日目にプサング
ラハン川にそれを投げ捨ててしまった。

警察はイルパンを起訴するために、重要証拠品となるポチョンひもをプサングラハン川で
探している。証拠品が揃えば、6年の入獄を最高刑とする刑法典第363条(破壊行為を
伴う窃盗犯罪)並びに最高刑入獄8カ月の刑法典第179条(墓地施設の破壊)を適用し
て送検する意向。[ 完 ]