「ジャイロロの旅(1)」(2018年01月19日)

西ハルマヘラへ行くなら、海の旅。落ち着きと、自然のままの土地と、ひとびとの親しみ
を求める都会人にとって、そこは最適な保養地だ。完璧な素朴さがそこにある。

西ハルマヘラ県の首府ジャイロロ(Jailolo)は必ず聞き覚えのある地名だ。毎年5月には
ジャイロロ湾フェスティバルが開かれている。かつてのスルタン国ジャイロロは、周辺の
スルタン国と共同でフェスティバルを開くようになった。テルナーテ(Ternate)、ティド
ーレ(Tidore)、バチャン(Bacan)と共に四スルタン国で。

テルナーテとティドーレの両スルタン国は歴史の勉強でなじんだ名前。バチャンはメノウ
石フィーバーが大勢のひとをとりこにしたことで有名に。ジャイロロスルタン国は16世
紀にその名を歴史に残したあと、長い間埋もれていた。その地のシンボルであるスルタン
はいなくなってしまったのだ。やっと十年ほど前にスルタンが復活したものの、別人をス
ルタンに推す声がないわけでもない。


ジャイロロの位置がどこなのかを誰もが知っているというわけでもない。ジャイロロはス
ルタン国であり、湾であり、県であり、県の首府なのだから。西ハルマヘラ県は2013
年に、北マルク州北ハルマヘラ県から分離して作られた。

ジャイロロへ行くのは、テルナーテ島のテルナーテ市まで飛行機で行くのがもっとも便利。
今ジャカルタからテルナーテへの直行フライトは、ガルーダとバティックが運航している。
テルナーテに着いたら、スルタン・バアブラ空港からジャイロロへ渡る船の乗り場までレ
ンタカーで10分程度。テルナーテ〜ジャイロロ間は定期航路があり、一時間半の航海だ。
もし高速船を使うなら、40分で行ける。鏡のような海面を走る朝の航海が一番快適だ。

年々改善されているとはいえ、西ハルマヘラ県のインフラや施設はまだまだ遅れている。
この県を構成している9郡の町に向かう道路はよく整備されているが、電力量不足という
大きな問題を抱えている。


食堂もあまりない。ここで人気のある朝食はナシクニンにおかずは干しシンコンの細切り
と卵のバラドとスマ魚のバラド。バラド(balado)とはsambal ladoの短縮語で、別名sambal 
gorengとも言う。

清潔さと味の点でリコメンドできるのは、パダン料理店と空揚げアヤムゴレンをメインに
するインドネシア料理店で、どちらもジャワ人移住者がオーナーだ。


西ハルマヘラ県には123の島があり、すべてが自然のままに保たれていて美しい。島々
のほとんどは無人島であり、島の周辺はサンゴ礁で包まれ、ダイビングにもスノーケリン
グにも格好のスポットを提供している。水辺はマングローブ林に覆われ、波は穏やかで、
マリンバティ(Marimbati)のような素晴らしいビーチがある。船でマングローブ林の中を
くぐってビーチに降り立てば、夢見るようなサンセット体験が待っているにちがいない。

今回の旅行記は、ダイビング好きなコンパス紙女性記者が仰せつかったもののようだ。ま
だまだ観光地化していない素朴な地方で、かの女はきっと心行くまでその醍醐味を満喫し
てきたに違いない。[ 続く ]