「疑わしきは殺せ」(2018年01月19日) カンパル県タンバン郡リンボパンジャン村第II部落で、2017年12月16日夜、20 歳男性Wが部落民にリンチされて死亡した。Wはカンパル県バンキナン住民であり、その 村に親類縁者はいない。 第II部落では、その地方で何度か強盗事件が発生していることから、毎晩住民による夜警 見回りに力が入っていた。その夜の夜警団が21時ごろ村道脇の暗い藪の中に潜んでいる Wを見つけた。Wが乗って来たオートバイはエンジンが止まっている。 夜警団はWに声をかけた。 「ここで何をしてるのかね?」 「友人を待ってるところだ。」 「友人とはだれのことかね?そしてあんたは誰だ?」 あれこれと尋ねられはじめたから、Wはその場から走って逃げた。 そんなことをすれば、あたかも自分にやましいことがあるのを告白したようなものだ。夜 警する側にしてみれば、「やましいことがなければ、なぜ逃げるのか?」ということにな る。 夜警団は叫んだ。「強盗だ!」 本当に強盗なのかどうかはまだわからないわけだが、走って逃げる人間を捕まえるために は、そう叫べば部落民が家から出てきて逃走者を捕まえるのに手を貸してくれる。 そして事実はその考え通りに進展した。Wを捕まえた部落民たちは、Wのオートバイを焼 き、Wにリンチを加えた。 手ひどく痛めつけてから部落民たちはWを近くの街道へ引っ立て、通りかかったカンパル 県警のパトカーを止めてWを警察に引き渡した。パトカーはそこから7キロほど離れたタ ンバン保健所にWを連れて行って治療させたが、頭部の怪我がひどいために保健所はカン パル警察病院へ移すことを決めた。そして深夜1時、Wが死亡したことを警察病院が明ら かにした。死因は出血多量だった。 警察はこの事件に関わった部落民から事情聴取し、Wは何ら犯罪を犯していないことを誰 もが証言した。一方、実はWは破壊行為を伴う窃盗犯罪のために投獄され、2017年1 月に刑期を終えて出獄した前科者であり、またカンパル県内のある警察署でWを恐喝とわ いせつ行為の犯人として指名手配がかかっていることも明らかになった。