「ジャイロロの旅(終)」(2018年01月23日)

翌日午前7時: ロロダ群島
ロロダ郡のロロダ群島が今日の目的地。グーグルマップにはカハトラ(Kahatola)島ともう
ひとつ小さい島が出ているだけだが、現場へ行くと大岩でできたたくさんの島々に出くわ
す。海中から突き出している大岩が寄り集まって群島を成しており、この近辺の海は深く、
絶好のダイビングポイント。
海が穏やかなら、高速船はそれらの大岩の島に接岸できる。大岩の上に座って、大自然の
驚異に思いを寄せることもできるのだが、前年なことに12月末の風と波はあまり親切で
なかった。

そこまで行くのに、ハルマヘラ島西岸に沿っての3時間の航海は、波にもまれる揺れが胃
腸の調子をおかしくしてくれた。ところが船の運転者は笑いながら言う。「こんな波はま
だまだたいしたことじゃねえよ。大波ってのは、船が波の谷間に沈んだ時、水面が屋根の
上にあるようなものを言うんだよ。」
それが?インドネシア東部地方の日常生活だ。海が荒れると、船舶用燃料の供給が途絶えて
しまうのが、ひとびとにとっての大問題になる。

ロロダに着いた時、航海中の吐き気への忍耐は、大きな歓びでつぐなわれた。まず群島を
彷徨してから、カハトラの滝に向かう。カハトラ島は海抜50メートルほどの山であり、
滝の水源は山頂で、水は青緑色の海に流れ落ちてくる。滝つぼは深さ5メートルほどの海
辺。船が島に近付くと、乗客は次々と滝つぼ目がけて海中に飛び込んだ。
帰り時間になって、船がまた動き出す。ところが船は船首を滝の下に突っ込んだ。乗客に
滝の水浴びを促す。心憎いシャワーのサービス。

翌々日午前10時: ジャイロロ市場
ジャイロロの町のパサルに向かう。どこの町を訪れても、パサルを見に行けばその土地の
素顔を目にすることができる。この町がまだ新しいのに比べて、パサルは清潔だ。床には
タイルが敷かれている。売り手のほとんどは女性で、ミナン人移住者が多い。売り物は食
材が多い。トマト・サヤインゲン・ナス・トカドヘチマ・カンクン・ウリ・トウガラシ・
エシャロット・アボガド・スイカ・パンの実・鮮魚・塩魚・シリピナンそして衣服など。

午前11時: ガモメン村
東サフ郡ガモメン(Gamomeng)村には、住民の寄合い施設であるササドゥ(sasadu)が残され
ている。この村のササドゥは築後数百年を経過しており、木製の柱も建てられたときのま
まだ。
壁のない開放的な構造のこの建物では、村の共同生活に関わるあらゆることが話し合われ
てきた。今でもその伝統は続けられている。
この朝は、ササドゥはがらんどうで、日曜日の礼拝を終えた村人たちは、三々五々自宅へ
の帰り道をゆったりと歩んでいた。

15時: パストフィリ島
パストフィリ島はサンゴの死骸が積み重なってできた島で、面積は潮の干満で変化するが、
3〜4百平米しかない無人島だ。この島の周囲では、ダイビングとスノーケリングの両方
が楽しめる。
夕方のやわらいだ陽射しの下で、サンゴ礁は健康な姿を見せている。体長10センチもな
いタツノオトシゴがいて、ガラパゴスバットフィッシュがいて、コバルトスズメダイもい
て、カーディナルフィッシュの群れがいる。
太陽が水平線に近付くとき、ヒリ、テルナーテ、マイタラの島々のバックはオレンジイエ
ローに彩られる。海鳥の群れが列を成して飛び、自分がかけがえのない平和の中にいるこ
とを感じさせてくれた。[ 完 ]