「コメ中毒(後)」(2018年01月25日)

そのプログラムは今でも続いている。米の消費が国家食糧政策の物差しになっているのだ。
それどころか、サゴの産地に対しても貧困者支援米がばらまかれている。

< 食糧多様化 >
今やインドネシアは中国・インドに次ぐ世界第三位の米消費国である。ところが、国民ひ
とりあたりの米消費量はインドネシアが世界最大なのだ。国連食糧農業機関(FAO)と国
際稲研究所によれば、インドネシアの米消費は2008年の年間ひとりあたり139キロ
が今や160キロに増えている。

ところが他の諸国は米消費を減らす傾向にあり、中国は年間ひとりあたり100キロ、イ
ンドは80キロ、マレーシア80キロ、日本は60キロだ。米消費が減っているのは、食
品がますます多様化しているためだ。

インドネシアのひとりあたり米消費量の上昇は、人口の増加に加えてサゴ消費社会が米へ
の移行の渦中にあるためだ。サゴと米のグリセミック指数が異なっているために、米だと
より多くの量をかれらは摂取することになる。この指数は食後どれだけ早くグルコースが
血中内に放出されるかを示すものであり、グリセミック指数が低い食材は満腹感がより長
い。

サゴはグリセミック指数が低いので、米よりも消化が遅い。米のグリセミック指数は70
%超であり、サゴは20%程度、サトイモは50%。米のグリセミック指数がたいへん高
いために、血糖値は急速に上昇し、糖尿病や他の代謝性疾患を促進させる。

健康問題ばかりか、国民の増加とひとりあたり米消費量の増大は米の需要を押し上げるが、
ジャワやバリの水田用地転換は激しさを増している。ジャワ・バリの水田面積不足を補う
ために政府は稲栽培拡張政策をパプア(特にメラウケ)や、マルクからムンタワイに至る
小さい島々にまで推進している。

伝統的に米を主食にしていなかった社会の真っただ中に新規の水田開発を行うことで、新
たな米消費という問題が触発されている。消費のみならず、生産レベルの問題もそこに拍
車をかけている。パプアやムンタワイのような米を知らなかった伝統社会に効率の高い米
生産を行わせるのは、即席では終わらない。

サゴ・タロ・バナナなどはほとんど何もしなくとも、湿地や森に自然に生育する。ところ
が稲は広い土地に密度の濃い世話をしてやらなければならない。ヘーラーツ・ペルソーン
(Gerard Persoon)の1992年調査によれば、ムンタワイ住民は一時間の労働でサゴを2.
6キロ生産できたが、米は一時間に0.6キロしか生産できなかった。

インドネシアは過去の経験から学んで、食糧多様化を推し進めなければならない。米中毒
は将来の食糧不足という災厄を生み出すにちがいない。[ 完 ]