「米食生活パターンがもたらすもの」(2018年01月26日)

米だけを基準に据えている国の食糧政策が、一部国民の食糧に対する主権に脅威をもたら
している。西スマトラ州ムンタワイ(Mentawai)諸島のような小島はエコロジー的に稲の栽
培に適していないのだ。

ムンタワイ諸島のサーベイでエイクマン分子生物学研究所とリサーチテクノロジー高等教
育省の合同チームは、住民の食生活が沿岸部をメインにして集団的に変化したことを発見
した。伝統的に主食だったサゴやサトイモが米に変わり、おまけに即席めんの摂取も頻繁
になっている。内陸部にある南シブルッ郡マドバッ村ウガイ部落でも、同じような食事パ
ターンの変化が起こっている。

「1970年代に政府が内陸部の住民に沿岸部へ移るよう要請しました。国が教育と医療
のサービスを与えられるように、というのがその理由でした。それ以来、いろいろ変化が
起こりましたよ。食事の変化もそのひとつです。一部の人たちは米を食べるようになりま
した。特に子供たちがたくさん。
サゴやサトイモを加工するのがみんなめんどくさくなったんです。サゴやサトイモは金を
出して買う必要がないというのに。」
南西シブルッ郡タイレレウ村の有力者マテウス・ピアトルさん62歳はそう物語る。

2015年に配給事業公社(Perum Bulog)が米の供給を開始してから、食生活が大きく変
化した。配給事業公社は3カ月おきに米を持ち込んで、キロ当たり2千ルピアで販売して
いる。

南西シブルッ郡長は、森林を切り開いて水田を作ることを計画している、と言う。「住民
が米を買うのは、水田がまだないからだ。われわれは稲を植えることを考えている。」


シンガポール南洋理工大学の調査機関EOSで働いているムンタワイ出身の人類学者ジュ
ニアトル・トゥリウス氏は、稲と違って、サゴやサトイモは森林を切り開いて水田を作る
ようなことをせずとも、ムンタワイでは自然のままに生育すると言う。
「サゴは森林外縁の湿地に生えているし、サトイモは自宅の周囲に植えればよい。水田を
作ろうとするなら、土地の開墾と灌漑設備が不可欠であり、おまけに薬剤や肥料に頼るこ
とになる。」

「今インドネシアの慣習社会や伝統社会の多くは、文化の転換期に直面している。特に消
費行動において、それが顕著だ。北マルク州マバでは、地元政府が森林を拓いて水田を作
ろうとしている。かれらは米の飯に憧れているのだ。米を食べれば利口になると思ってい
る。」エイクマン分子生物学研究所理事代行はそのように現状を説明している。

食糧主権を脅かすだけでなく、食生活の変化は特定の病気にかかりやすくなるリスクをも
抱いている。ムンタワイ住民の保健プロフィールには、高血圧のような代謝性疾患が散見
されるようになってきた。

「高血圧は2015年以来、地元保健所が取り扱う十大疾病のひとつに腰を据えました。
それ以前には一件もその例がなかったというのに。」タイレレウ村ペイペイ保健所長はそ
うコメントした。