「マスメディアがバハサガウル普及の旗手」(2018年02月02日)

2000年12月17日のコンパス紙に掲載された記事がある。「ラジオの拝跪方角はジ
ャカルタ弁・・・」と題するその記事を読むと、バハサガウルに関する当時の状況が手探
りできるにちがいない。その内容は次のようなものだ。


周波数104.7のKISS FMラジオ局は北スマトラ州メダンの若者たちに人気があ
る。アナウンサーたちはバハサプロケムやジャカルタ方言を使っているのだ。

「わたしたちは物まねや追従でやっているんじゃなくて、それがトレンドだし、言いやす
いから、使ってるんです。悪いことじゃないんだから。」北スマトラ大学医学部第1スメ
スターの女子大生タティさん17歳はそう語る。かの女はKISS FMの愛聴者で、こ
れまで2回ラジオ局のクイズに応募して当選した。愛聴者とラジオ局の相互関係はそんな
感じだ。

最新の表現に従うなら、かれらが使っている言葉はバハサガウルと呼ばれる。KISS 
FMラジオ局長はバハサガウルの使用について、故意にそうしようと努めているのでなく、
マーケットトレンドに従っているだけだ、と説明する。

FMラジオのマーケットは若者言葉に強く反応する傾向を持っており、ラジオ局がマーケ
ットの望むものを無視しては、前に進めなくなってしまう。「実はメダンの若者が好きな
言葉を発見しようと努めているのだが、現実にはジャカルタとメダンの俗語を取り混ぜて
使うような形になっている。」

その結果文化パトロニズムが起こり、ジャカルタ弁がポップ文化の拝礼する聖地になって
いるのが現状だ、とラジオ局長は述べている。


スラバヤのラジオサルバトーレ制作課長は、若者を対象セグメントにしているラジオ局は
たいてい、ジャカルタ弁を標準スタイルに取り込んでいる、と言う。「それもスペシフィ
ックに、ジャカルタのラジオプランボースをモデルにしているんですよ。」

同じスラバヤのラジオイスタラのアナウンサーも、同じ意見を述べる。「ジャカルタが拝
礼の方角にされていることは否定できませんね。」

その原因は若者向け雑誌・映画・TV番組などあらゆるマスメディアがジャカルタ弁を好
んで使っていることに帰せられる。ジャカルタ弁が若者たちの日常交友言語に深く根をお
ろしてしまった。ましてや、ジャカルタが時代のトレンドセッターであるという評価がか
れらの心理に影響をもたらしているのだから。


バンドン一円で人気のあるラジオOZ愛聴者のアストゥティさんは、少々きつい口調でイ
ンタビュアーに返してきた。

「ラジオアナウンサーがジャカルタ弁風のインドネシア語を使って、何がいけないんでし
ょうか?そんなことが問題なの?スンダの地に住んでいるわたしたちも、ジャカルタ弁を
使うのよ。イギリスやアメリカみたいな、もっと遠いところの言葉だって使ってますよ。」

ポップ文化パトロニズムにおける綱引きは絶えることなく起こっている、とパジャジャラ
ン大学コミュニケーション学部ジャーナリズム研究部門を主管しているライラ教育学修士
は語る。地方のラジオ局アナウンサーがジャカルタ弁を使うのは、ラジオが話し言葉を使
うからではないか、とかの女はコメントする。

「あるいは、地方部ではジャカルタ弁インドネシア語がインドネシア語のお手本の位置に
置かれているのかもしれません。でも地方のひとたちがジャカルタ弁をインドネシア語の
心臓部と見なしているとはまだ断言できませんが・・・」

アナウンサーがジャカルタ弁を使っていなくとも、そのラジオ局の愛聴者が数少ないとい
うことを意味してはいない。ライラさんが経営陣に加わっているラジオマラはそのような
スタイルを執っていないが、閑古鳥が鳴いているわけではありません、とかの女は言う。
アナウンサーはそれぞれが個性を持っていて、放送の中でそれを愛聴者に送り付けている。
ジャカルタ弁を使って愛聴者に受けようとしているのは、媚びではないだろうか、とライ
ラさんはこの問題に対するひとつの視点を表明した。