「高校生が先生を暴行殺人」(2018年02月07日)

東ジャワ州マドゥラ島のサンパン市国立トルジュン第一高校で、教員が自分の教え子であ
る生徒に暴行されて死亡した。死亡したのは芸術科目の絵画を教えていた27歳のアッマ
ッ・ブディ・チャッヨノ先生で、教室内で授業中にひとりの生徒から暴行を受けたが、現
場にいて一緒に授業を受けていた他の生徒たちの証言によれば、ブディ先生は抵抗したり
避難しようとせず、黙って殴られていたとのことだ。

事件が起こったのは2018年2月1日の13時ごろのことで、11年生の絵画の授業中
に普段から札付きの生徒Hが先生に注意された。そのシーンの内容が報道機関によってふ
たつの異なったバージョンで流されている。

ひとつは、Hが同級生にしつこくからんで悪ふざけを続け、先生がなんども注意したが無
視したため、先生が絵具のついた筆でHの頬に触れたというもの。もうひとつはHが居眠
りしていたため、先生が絵具のついた筆でHの頬に触れたというものだ。

Hは怒って立ち上がり、先生の顔面にパンチを繰り出した。攻撃をやめようとしないので、
他の生徒たちがHを席に引き戻した。そのとき、先生はあまり深い傷を負ったように見え
なかったというのが目撃した生徒たちの証言だった。

授業が終わると先生は、授業中に起こった騒ぎについて校長に説明しに行った。Hをかば
うような内容の話をし、校長は先生に早退して早く休養するように勧めた。校長もそのと
き先生が大けがをしているようには見えなかったと述べている。

自宅に帰った先生は早目に休んだが、夜になって首が痛いと言い出し、更に人事不省に陥
ったためサンパンの病院に運ばれた。病院は即座にスラバヤのストモ総合病院に移すよう
指示を出した。

しかしストモ総合病院では既に手の打ちようがなく、22時前に先生が死亡したことが確
認された。死亡診断は脳幹の機能停止となっている。

しかし、居眠りしていたHが先生に暴行したバージョンによれば、Hは夕方に先生が帰宅
するのを待ち伏せし、路上で再度先生に暴力を振るったというストーリーになっている。
先生は帰宅するとその場に倒れ込み、病院に担ぎ込まれた。

サンパン警察はその暴行殺人事件の届を受けて、同日24時ごろHの自宅を訪れて本人を
逮捕した。本人もHの家族も、抵抗は一切しなかったそうだ。


警察はこの事件に関連して、死亡した先生の側に属す一族が復讐のための決闘をしかける
ことのないよう、警戒を強めている。

マドゥラ人の文化で有名なもののひとつにチャロッ(carok)というものがある。マドゥラ
語のチャロッは「名誉のための決闘」を意味しており、辱めを受けた者が恥を雪ぐために
武器を手にして殺し合いを行うことが大昔からマドゥラ社会の倫理の一部を構成してきた。
チャロッを行わなければ、社会から二重の恥辱を蒙るわけで、日本の武家社会の倫理とた
いへんよく似ている。

このチャロッのおかげで、マドゥラ人が他の諸種族から怖れられていることも事実である。
名誉や誇りを生命と等価に置くマドゥラの古典文化に従えば、自分に恥辱を与えた人間を
殺したいほど強く憎む精神傾向は否定できないものだろう。何を恥辱と感じるのかには常
識的な部分に加えて個人差が占めている部分があり、他の諸種族が怖れる気持ちがわから
ないものでもない。