「ブタウィ語を知ろう(2)」(2018年02月12日)

19世紀末に上述の諸外来種族は対人接触・ビジネス・文化・政治などの諸面において言
語的文化的変容プロセスを経験し、新しい種族の誕生をもたらしたようだ。かれらが「ア
スリ」ジャカルタ人、別名ブタウィ人である、とヤヤもムハジルも結論付けている。

ブタウィ文化人フィルマン・ムンタコによれば、ジャカルタ弁の特徴はインドネシア語の
中に容易に混ぜ込めることだそうだ。つまりたくさん共通性を持っていると言える。「発
音に違いがあるだけだ。」連作「ガンバンジャカルタ」作者のかれは、1988年6月2
2日付けコンパス紙の記事でそう述べている。


ジャカルタ弁の活力はブタウィ人の活力を反映する鏡なのである。リドワン・サイディは
その理由の一つに、ブタウィ社会が商業社会であることを挙げている。品物やサービスを
売るのに、ブタウィ人は豊かな社交性を研鑽した。「思想や主義主張がどうあれ、そんな
ことは二の次の問題なのだ。」

大勢の外来者がやって来て、ジャカルタに定住した。特に独立以後は、それがブタウィ社
会に変化をもたらした。元々は先住民としてより高い社会ステータスを持っていたかれら
は、高学歴者の来住が増えるに従って社会ステータスが低下傾向を見せるようになった。

ジャカルタが国の首都として建設されて行く中で、かれらは中心地区にあった自分たちの
居場所を失い、ジャカルタ辺縁部へ、郊外部へと居所を変えることを余儀なくされた。


< 在来ジャカルタ弁 >
スティーブン・ウオーレスが分類したモダンジャカルタ弁と在来ジャカルタ弁の違いを見
てみよう。在来ジャカルタ弁は次のような特徴を持っている。

A.単語の最終音節にある/a/が/e/(強母音「エ」)に替えられる。
インドネシア語 kita, dia, apa, mana, bawa
在来ジャカルタ弁 kite, die, ape, mane, bawe

B.語頭第一音節が/a/音のもので、その子音がハムザ音(声門閉鎖音)に替えられる。
インドネシア語 saja, sama, saya
A.のプロセスが同時に起こると
在来ジャカルタ弁 aje, ame, aye
しかしモダンジャカルタ弁では aja, ama, aya

C.語尾の/ah/が/e/(強母音「エ」)に替えられる。
インドネシア語 darah, payah, rumah, susah, pindah, sumpah
在来ジャカルタ弁 dare, paye, rume, suse, pinde, sumpe
モダンジャカルタ弁はこの法則を使わない

D.在来ジャカルタ弁には二重母音がないので、単母音に替えられる。
インドネシア語 pulau, kalau, sampai
在来ジャカルタ弁 pulo, kalo, sampe
[ 続く ]