「ルマガダン宿泊の旅(後)」(2018年02月15日)

スラスリさん66歳は三年前に5千万ルピアをかけてルマガダンの修理を行った。木の朽
ちた部分をすべて直すのは、その金額では無理だったから、家の表側だけをボルネオとメ
ランティの木に代え、台所までは手が回らない状態のままになっている。

それでもやっと、昔ながらの家のデザインは維持されたものの、屋根に葺かれていたイジ
ュッは代わりを手に入れることができず、トタン板に代えた。今や屋根葺き用のイジュッ
を作る職人はどこにもおらず、たとえ何とか品物を探し出すことができたとしても、値段
は目が飛び出るほど高い。トタン板なら値段ははるかに手頃であり、そして至る所で売ら
れているのだ。

ルマガダンは、数百年前に最初作られたときも高い費用がかかった。だが周囲の自然を巧
みに利用する知恵とコミュニティ生活での連帯が、その障壁を低いものにしてきた。今、
建て直しの材料がコミュニティの中で作り出されるはずもなく、金銭経済の原理に従うほ
かないのである。おまけにランタウに出た一族の者の多くがライフスタイルと価値観を変
化させてしまえば、一族が集うべきルマガダンはかれらにとってお荷物になるしかない。
そんな変化を見て取ったルマガダンの住人達も、家屋の腐朽に連れて裏にこじんまりした
家を建て、移り住むようになっていく。


その一方で、新築のルマガダンもあちこちに出現するようになってきた。だがこのルマガ
ダンは社会的機能が大違いのものなのである。新しいルマガダンのオーナーはランタウ先
で成功したミナン人がほとんどで、かれらは個人の住居としてルマガダンを使っている。
伝統文化の中の、一族が集う場所としてのルマガダンではなくなっているのだ。

そしてついに、お荷物になっていたルマガダンを商業施設として利用する発想の転換をお
こなったブンダが出現した。南ソロッ県スガイパグ郡コトバル村スリブルマガダン地区
(Kawasan Seribu Rumah Gadang, Nagari Koto Baru, Kecamatan Sungai Pagu, Kabupaten 
Solok Selatan)に住むヤルネリさん68歳が、自分が住んでいるルマガダンの一部の部屋
を観光客向け宿泊用に貸し出したのである。他の部屋は自分や孫たちが住むために残した。
そのルマガダンは1800年ごろに建てられ、1937年に元のデザインのまま修理が行
われている。同じようにホームステイとして売り出されたルマガダンはこの地域で他に2
0軒ほどある。

このアイデアはヒットした。ミナンの伝統家屋ルマガダン別名ルマバゴンジョンに宿泊し、
高原の夜と朝の爽やかな大気を味わい、エキゾチックな思い出を抱いて旅行のロマンチッ
クさをさらに高めたいと思う観光客がやってくるようになった。

西スマトラ州の旅行代理店でこのソロッのルマガダンホームステイを紹介していくれるそ
うだから、ご希望の方は問い合わせて見るとよい。

ミナンの高原にはコスモスが咲いている。ミナンカバウは爽やかな高原の旅が楽しめる土
地だ。[ 完 ]