「バリプリナ」(2018年02月26日)

バリ島ウブッ(Ubud)の町から北へおよそ8キロ、バリの代表的な棚田風景を見せてくれる
トゥガララン(Tegalalang)にバリプリナ(Bali Pulina)がある。
コンパス紙記者が2018年2月にバリプリナを訪れたその日、トゥガラランは雨が降っ
たりやんだりのうっとうしい状態だった。時間も既に午後遅くなり、インドネシア人とア
ジアからの外国人観光客の姿がちらほらと見えるだけ。
ティオと名乗るガイドがバリプリナの案内をしてくれる。かれはまず、伝統的コーヒー作
りプロセスの見学に客たちを誘った。土間の台所のような場所で、コーヒー豆が処理され
ている。そこに置かれている器具類は、木や竹あるいは陶器で作られているものばかり。
天日乾燥処理を終えたコーヒー豆が縁台の上に並べられた竹編みのざるに盛られている。
天日乾燥は、天気の良い日が続けば一週間で終わるが、雨や曇りの日が多ければ、もっと
長期間になる。
コピルワッ(kopi luwak)が乗っているざるもあった。豆は塊になっているものもあり、と
ころどころが茶色になっていて、他の豆と違うのがすぐにわかる。ここの豆は全部キンタ
マニ種だそうだ。
薪の炉の上で、豆が炒られる。1キロの豆を45分かけて炒る。炒り終えた黒茶色の豆は
臼やすり鉢ですりつぶされる。できた粗い粉はふるいにかけて細かい粉だけをより出し、
それが客に供される。
台所から近いところにオープンスペースがあり、そこには地元民が昔から使ってきたさま
ざまな農具が展示されている。牛に引かせて田の土を掘り起こす鋤、草刈の道具、収穫を
干すための道具類、うなぎを獲るためのびくに至るまで。道具類の多くは竹編みでできて
いた。
ティオさんは客を屋外に誘った。建物周辺に植えられているさまざまな植物を紹介してく
れるのだ。コーヒーの木、カカオの木、クローブの木、シナモンの木、そしてショウガな
どのスパイス類。
その一角に20ほどの檻があって、中にルワッが飼われている。ほとんどはまだぐっすり
と眠りこけているが、中には目覚めて伸びをしているのもいる。ルワッは夜行性動物だか
ら、今の夕方、人間にとっての朝がやっとかれらを訪れたということだろう。
ルワッコーヒーの生産にこの手法が使われていることに関する賛否両論が世界中から投げ
かけられていることはインドネシア政府も十分承知しており、飼われているルワッの一頭
一頭に対する取り扱い規則が定められ、働かせるのは一定期間に限定されている。
バリプリナが供するコピルワッは、もちろんそこで生産されたものだ。コピルワッは腸内
発酵プロセスを経ているため、普通のコーヒーよりもマイルドで、発酵の影響が酸味を強
め、カフェインは弱まっている、と言われている。
チョコレートは大好きでも、カカオの実を触ったことのない人は多い。客がカカオの実に
ついてあれこれ質問したところ、ティオさんは木の高いところになっている熟した実を取
って、客に触らせてくれた。サービス意欲旺盛なガイドさんだ。乾燥と発酵プロセス前で
はあるが、実の一部を口に入れて味わってみることまで客にさせてくれた。
バリプリナには展望台がある。クンバンコピステージ(Kembang Kopi Stage)と名付けられ
たこの展望台は、上空から見るとコーヒーの花の形をしている。断崖の縁に設けられたこ
の広いステージは、緑に包まれたバリ島山岳部の絶景を遠景にし、近辺の棚田をあたかも
上空から見渡すように楽しませてくれる。セルフィーはお好みのまま。
見学ツアーが終われば、お待ちかねのコーヒータイム。10万ルピアのチケットで客はふ
たつのコースを選択できる。大カップでコピールワッを心行くまで堪能するか、あるいは
普通カップでチョイスコーヒー一杯と8つのミニカップに入ったさまざまな飲み物。8種
類の飲み物は、ピュアーバリコーヒー、?バニラコーヒー、チョコレートコーヒー、ホット
チョコレート、ギンセンコーヒー、ジンジャーコーヒー、ジンジャーティー、レモンティ
ー。どのコースにも、蜜のかかったピサンゴレン二個とパームシロップのかかったヤシの
実の果肉おろしを載せたルピスクタン(lupis ketan)一個が付いてくる。ゆったりと寛げ
る喫茶室で周囲の大自然を眺めながら、さああなたはどちらを選択しますか?