「ナシゴレン(7)」(2018年03月06日)

印尼華人のひとりが著した「インドネシア化した中華料理」に関する書物によれば、油を
使って熱する調理方法には次のようなものがある。

炸(チャ)加熱した多量の油に食材を浸す
炒(チャウ)少量の油で手早く加熱する
煎(チェン)卵焼きのように少量の油で熱する
 
インドネシアの中華系レストランを愛用されている方にはおなじみの、チャという調理名
称がある。cah kangkung, cah brokoli, cah jamurなどの言葉にきっと見覚えがあるので
はないだろうか。

通常cahと表記されているその綴りは、上述の「炸」の福建語音に該当しているのだが、
どうしたことか、インドネシア語の調理方法を読むと、tumisと書かれているのである。

おまけに巷に流通しているレストランのメニューの中にはtumis kailan cah jamurのよう
な書き方になっていて、出てくる料理は芥蘭菜とシイタケの炒め物になっているのが普通
だ。シイタケだけがディープフライされているわけではない。

この事実も謎と言えば謎であるように、わたしには思える。インドネシア語を解する華人
は不思議に思わないのだろうか?


もうひとつの謎は、日本語の「焼き飯」。ナシゴレンは中国語の炒飯で、炒飯=日本語の
「チャーハン」「炒め飯」「焼き飯」だから、ナシゴレン=焼き飯という理解が成立する。
そもそも、調理に関連する「焼く」という語の定義があいまいなことから、「焼く」と
「炒める」の区別がたいへんわかりにくくなっているのが実情のようで、焼くことに油が
どう関わっているのか、また手早く加熱するのかどうか、そのあたりの明確な答えが見つ
からない。

「鉄板に油を敷いて焼く」という語法があるそうだが、鉄板焼きが普及するはるか昔から
チャーハンを焼き飯と呼ぶ用法が存在していたことを、わたし自身が体験している。

中国に焼飯(シャオファン)と呼ばれる料理があるのかどうかわからないが、インドネシ
アにはナシゴレンでないナシバカル(nasi bakar)という料理がある。単純に単語の置き換
え翻訳をすれば、このナシバカルが日本語の焼き飯になってしまうと言えそうだ。このナ
シバカルというのは、いかなる食べ物なのだろうか?これも家庭料理のひとつだから、工
夫してお愉しみいただけるようお薦めしたいと思う。[ 続く ]