「ナシゴレン(9)」(2018年03月08日)

しかし、全工程蒸すだけの一辺倒という方法を、伝統的飯作りプロセスとして推奨するひ
ともいる。この場合はmenanakが使われず、mengukus nasiと言うようだ。

まず蒸し器の身近くまで水を入れてから身を置き、沸騰させる。沸騰したら、洗ってある
コメを入れる。コメが柔らかくなったら容器に移し、蒸し器の水を捨ててまた水を入れ、
沸騰させる。沸騰したらさっきの半熟飯をまた蒸し器に入れて、蒸す。できあがったら容
器に移し、扇ぎながらかき混ぜる。


そういう方法とは別に、インドネシアにはコメを飯にするさまざまな方法がある。代表的
なものはイドゥルフィトリに使われるクトゥパッ(ketupat)だろう。

東南アジア一帯で広く普及しているこのクトゥパッはヤシの葉を袋状に編んだものにコメ
を入れて作られる。調理法は、まず洗って水に浸しておいたコメを袋状の中に入れて閉じ、
鍋に袋の全体が浸る量の水を入れて熱し、沸騰直前にクトゥパッを入れて5時間くらい熱
する。コメを袋に入れるとき、コメが膨らんでちょうどキチキチになるだけの空間を残し
ておかなければならない。

インドネシアの中にもこのクトゥパッに異なる名称を用いているところがあり、スンダや
ジャワはクパッ(kupat)、ブタウィはトゥパッ(tupat)、バリではティパッ(tipat)などと
呼ばれている。各種族文化によってイドゥルフィトリに強く関連付けているケースもあれ
ば、そうでないところもあり、普段の日常生活に頻繁にその姿を見せる地方もあれば、イ
ドゥルフィトリのシーズンを外すとその姿をみることがないところまでいろいろだ。バリ
島では普段からヒンドゥの祭事にも使われており、日常生活の片隅にその姿を見ることが
できる。


他になじみ深いものにロントン(lontong)がある。円筒状に固めた飯を輪切りにして、よ
くサテに付けられているあれだ。ロントンはジャワ文化にその起源を持ち、インドネシア
独特のものなのだそうだ。ロントン作りにはバナナの葉を使う。作り方は次の通り。

バナナの葉を適切な大きさで数枚用意し、乾燥させておく。その葉を巻いて直径3センチ
程度の円筒形にし、端をツマヨウジで止めてふさぐ。洗って水を切ったコメを円筒の半分
くらいまで入れ、円筒の口をツマヨウジで止めてふさぐ。

鍋に円筒全体が浸るまでの水を入れて、円筒を4時間くらいゆでれば出来上がり。円筒状
に固まった飯の外側は、バナナの葉から移った緑色になっている。[ 続く ]