「都市の立木と田舎の立木」(2018年03月13日)

都市の公共空間に生えている樹木は、都市行政をつかさどる役所の資産である。田園生活
では家の敷地内であろうが外の道路脇であろうが、生えている木を切っても、あるいは勝
手に木を植えても、通行者の邪魔にならない限り苦情してくる人間はひとりもいない。ジ
ャカルタで公共スペースの木を勝手に切り倒す人間が後を絶たない事実も、「ジャカルタ
が巨大カンプンである」というセリフを裏書きしているように思えてならない。


南ジャカルタ市ガンダリアに住むアミルシャ47歳が、アンタサリ通りの歩道に生えてい
る樹齢十数年のアンサナとマホガニーの木を切った。自分の所有地に入るのに邪魔になる
というのがその理由だった。

18年3月2日に中央ジャカルタ地裁で開かれた公判で、アミルシャはその違反行為が立
証されて罰金4千2百万ルピアの判決が下された。

実はそのアミルシャは2017年11月に、樹齢2年の木を切って罰金3千万ルピアの罰
を受けたばかりだったのである。懲りない犯行が判事の判決を高いものにしたようだ。


3月2日の中央ジャカルタ地裁公判では、都民の無許可伐採事件がまとめて裁かれた。次
の被告はラポロ・トゥルニップ50歳で、かれは南ジャカルタ市ラディオダラム通りにあ
る樹齢40年超のアンサナの木を切り倒した。その木は幹の直径85センチ、樹高10メ
ートルという巨木だった。

切った理由は、兄弟がオーナーになっているルコへの出入りの邪魔だったからというもの。
判事は罰金2千5百万ルピアの判決を下したが、被告が軽減を嘆願したために罰金2千万
ルピアに割り引かれた。

ラポロは北ガンダリア町役場統合サービスセンターに許可願いを出して受理されたと主張
したが、都庁森林局はそのアンサナの木がきわめて健全に生育していることから、許可願
いは却下されたと述べている。どうやらラポロはその却下された事実を知らなかったらし
い。町役場の許認可統合サービスセンターは地元民に対する許認可願い受付窓口でしかな
く、許認可そのものは都庁の担当部署が裁決を下すことになっている。どうやらその仕組
みについての誤解があったのかもしれない。
ラポロは罰金の分割納付を願い出て許可され、検事に対して顛末書を作成していた。

次の被告は、東ジャカルタ市ドゥレンサウィッのコロネルスギオノ通りにあるカフェの庭
に生えているブリンギンの巨木を切ったイルワン・ソノ36歳。

かれは中部ジャワ州プカロガンから妻子を残してジャカルタへ出稼ぎに来ている、その一
帯の駐車番を生業にする者で、木を勝手に切ってはいけないという規則があることを全然
知らなかった、と法廷で供述した。公共秩序に関する2007年都条例第8号第12条は、
許可なく公共スペースの木を切ることを禁止している。

判事は1千7百万ルピアの罰金を科す意向だったが、被告の経済能力があまりにも低く、
故郷の二人の子供と妻を養うことさえできなくなるとの嘆願によって、罰金は5百万ルピ
アに減らされた。


2017年の一年間と2018年2月までに発生して判決が下された事件は20件にのぼ
り、科された罰金総額は3億2千1百万ルピアになる。切り倒された木はすべて植え替え
られるため、都庁は当然その植え替え費用が予算外で必要となるわけだ。

都民から木が勝手に切り倒された事件の届出が今年、都庁森林局には16件届いているが、
調査して立件訴訟まで処理できたものはやっと6件だ、と森林局住民活性法執行課長は述
べている。