「トランスジャワとブルブスの不況(2)」(2018年03月15日) チルボンでトゥルスミ(Trusmi)バティック産品販売店を営んでいるオーナーは、チパリ自 動車道が開通した当座、来店客は45%増しになったと語る。「今じゃちょっと減って、 それでもまだ三割増しくらいにはなってますよ。でもね、わたしゃランプン(Lampung)と バタム(Batam)とマランにも店を出してるんです。チパリが開通してこの店の売上がアッ プしてるだけじゃなくて、それよりもっと大きい効果が出てるんですよ。商品配送が見違 えるようにスピードアップされましたからね。 昔はジャカルタへ品物を送るのに二日かかっていたのに、今じゃ一日で届きます。バティ ック製造に必要な輸入資材も、ジャカルタのタンジュンプリオッ(Tanjung Priok)で輸入 通関後チルボンに届くのが早くなってます。」 勢いに乗ったかれは、既にチルボンで事業の間口を広げ、バティック販売店だけでなく土 産物店、レストラン、博物館、バティック作り体験塾など、さまざまな事業を軌道に乗せ ている。 チルボン市内でナシジャンブラン(nasi jamblang)を売り物にする食堂を開いているオー ナーも、自動車道が開通してから売り上げが激増したと語る。「週末には来店客が3割増 しになりますよ。チパリが開通する前は21時に閉店してました。たいてい売れ残りがあ ったんですがね。最近じゃ19時にもう売り物がなくなって閉店しなきゃしょうがないん ですよ。一日の仕込み量は昔よりも増えているってのにね。」 かれはそれまで道路脇にテントを張った下でナシジャンブランを売っていたのを、201 2年に現在の場所に移して商売の規模を広げた。チパリが開通したとたん、来店客が激増 するようになった。週末の食事時間前後になると、2百人収容できるその食堂が客で充満 し、空席待ち客が表にあふれる始末だそうだ。 チパリ自動車道にあるレストエリアには、さまざまな店舗が並んでいる。その8割がたは 地元中小事業者だ。もちろん国際的なトレードネームも混じっているが、数は少ない。 自動車道管理運営者は、自動車道が開通することによって街道筋で商売していた事業者た ちがどんな運命に巻き込まれて行くのかをよく知っている。管理運営者は早くから街道筋 の事業者たちに、自動車道に設けられるレストエリアでの店開きあるいは移転を誘い掛け てきた。しかし事業者たちの反応はさまざまだった。 日本語グーグルがブレベスと表記している中部ジャワ州ブルブスは西ジャワ州との州境に 当たる。そこから東に向けてトゥガル(Tegal)〜プマラン(Pemalang)〜プカロガン(Peka- longan)と続く地方都市の名称が、現実に地元民が行っている発音と異なる響きを表すカ タカナ表記で書かれているので、インドネシア人とコミュニケートする必要のあるひとに はミスリーディングな環境が作られている。つらい時代だ。ともあれ・・・ そのブルブスは、赤バワンの産地であり、同時にアヒルの産地でもある。それはつまりア ヒルの卵の塩漬けtelur asinの産地でもあることを意味している。 国道1号線で小さなブルブスの町に入って行く手前に、緑色の塩漬け卵を販売する屋台が 延々と並んでいる場所がある。昼間通れば陽光の下に溶け込んでしまっているのだが、夜 間にそこを通ると煌々たる灯りがまだ遠くにいる車にまで手招きして呼び込んでいる印象 を避けることができない。あの光景が既に昔語りになっているような話を聞くと、隔世の 感を免れない思いがする。[ 続く ]