「強盗オンラインタクシー(前)」(2018年04月03日)

ウエディングオーガナイザーで働くシスカさん29歳は頑張り屋だ。催事のある前夜は、
会場となるホテルでの最終チェックが欠かせない。同じ日に催事が重なれば、ホテルを回
って午前2時3時まで働くことも珍しくない。たいていのひとはせいぜい一年で転職して
いくのに、シスカさんはこの仕事に入ってもう三年半になる。ビジネスオーナーはシスカ
さんに大きな期待を寄せていた。

既に一児の母になっているシスカさんではあるが、そんな仕事の関係から帰宅が朝になっ
たり、あるいは外泊して家に帰らないことも再三で、家族はみんなその事情を了承してい
た。


その夜、シスカさんは中央ジャカルタ市のホテルHで仕事を終えたあと、南ジャカルタ市
のホテルCへ行くためにグラブタクシーを呼んだ。午前2時20分だ。

やってきたのはプレート番号B2205BFUのスズキエルティガだった。シスカさんは
2列目の座席に乗り込んだ。運転者はFI32歳。しかし運転者の弟FH29歳が最後列
の床に潜んでいたことに、シスカさんはまったく気付かなかった。

車が走り出すと、FHが起き上がる。驚くシスカさんに短剣を突きつけて威嚇し、シスカ
さんの両手をガムテープで縛った。要求した金額は2千万ルピアだった。ところがシスカ
さんは現金をほとんど持ち合わせていなかった。家族に電話して現金を用意させろと言わ
れて電話してみたが、誰も電話に出ない。友人に金を貸してもらおうと考えて数人に電話
したものの、そんな時間に起きている友人はひとりもいなかった。


ジャゴラウィ自動車道を走っていた車は、スントゥルサービスエリアに滑り込んだ。奪っ
たシスカさんのハンドバッグに入っていた2枚のATMカードで金を引き出そうというの
だ。ところがどちらの口座にも、小さい金額の残高しかなかった。FIが怒り出した。

車はジャゴラウィ自動車道から一般道に降りて寂しい場所を探し、シスカさんの生命はこ
うして失われた。そしてチビノングリヤアスリの近くで、ふたりはシスカさんの死体を車
から放り出した。もう午前4時になっていた。

車はさらにボゴール市内に向かい、ファーストフードの店に入る。FHが車から降りて、
そこに停めてあった自分の車で自宅に向かった。FIはシスカさんから奪ったハンドバッ
グなどの品物を載せたままブブラッ方面に向かい、金目の品物だけ残して道路脇に捨てて
から自分の家に帰った。その日の昼頃、FIはモールジャンブドゥアへ行ってシスカさん
の携帯電話器を売った。

その日、午前7時ごろ、くず拾いがシスカさんの死体を発見したとの通報が警察に入った。
警察がシスカさんの足取りを追い、翌日の朝FIがボゴール県タジュールの自宅で逮捕さ
れ、その供述から弟のFHが同日昼頃逮捕された。警察はふたりを最高入獄20年の強盗
殺人罪で送検する意向。[ 続く ]