「オンラインタクシー事業の社会性」(2018年04月05日)

強盗オンラインタクシー事件は、オンラインタクシー産業が原理に置いているコンセプト
が持つ矛盾を赤裸々に露呈したように見える。

在来型タクシー産業が政府の構築した厳重な監督システムの下で営業しているのとは異な
り、法的にレンタカービジネスに対する監督制度が援用されているだけのオンラインタク
シー産業は、運転者と車両への行政監督システムも弱く、逆に言えば、それだけオペレー
タ会社の社会責任が期待されていると言えるにちがいない。

乗客を自動車で運送するというビジネスを行うために運転免許証の種類が定められ、それ
を取得するために特別のテストが行われることになっているのは、「インドネシアの運転
免許制度」http://indojoho.ciao.jp/koreg/qsim.html に見られる通りであり、政府は
2018年2月1日を期限としてオンラインタクシー運転手にその法規服従を求めた
(http://indojoho.ciao.jp/2017/1120_2.htm 参照)ものの、運転手たちはそれに反対
の姿勢を示し、いまだに徹底されないままの状態になっている。

もうひとつあるのは車検制度(uji KIR)の実施で、商用車両に対する車検は何十年も昔か
ら行われてきており、制度としては確立されているにも関わらず、自家用車は車検義務が
免除されてきたことから、自家用車でタクシービジネスを行っている運転者はこの義務付
けをも強く拒否している。

更に在来型タクシー産業の運転手たちにはタクシー会社が職業能力認定証明書の取得を推
し進めており、プロフェッショナルなタクシー運転手養成に会社が力を注いているのだが、
オンラインタクシー運転者たちはそれすらも拒否しているため、オンラインタクシー会社
も事業パートナーと位置付けているタクシー運転者に対するプロとしての能力涵養への力
の入れようが在来型タクシー会社に匹敵するものであるのかどうか、判然としない。

運転者は事業パートナーであって雇用被雇用の関係ではないから、能力向上は本人の問題
だということを理由にするのであれば、能力の劣る(非/反・社会的な)パートナーが事
業看板を使っていることに対する社会的利害観に関して会社が持つ姿勢がまるで不可解に
見えてくる。

消費者保護財団の調査によれば、およそ4千5百人のオンラインタクシー利用者の41%
が運転者のサービスに不満を抱いたことがあるものの、オンラインタクシー会社の用意し
ている苦情窓口は即応性がなく、おまけに運転者は利用者の住所や電話番号までわかるこ
とから、会社に厳しい苦情を出すと運転者からどんな嫌がらせをされるかわからないため、
そのビジネス構造自体が本質的な難しさを持っていると言えるだろう。消費者側の匿名性
がこの産業には存在しないことが致命的な問題になっている。

今回発生したシスカさん強盗殺害事件に関してインドネシア交通ソサエティは政府に対し、
犯人とビジネスシェアリングを行っていたオンラインタクシー会社に法的罰則が下される
ようにせよ、と強く求めている。