「ATM犯罪(後)」(2018年04月06日)

その手口でBCA、BRI、マンディリ、BNIなど13銀行の顧客1千2百人のデータ
を盗んでいた東欧シンジケートメンバー5人とその手先になっていたインドネシア人ひと
り(29歳)が首都圏やロンボッ島で首都警察に逮捕された。一味のルーマニア人3人
(26歳ふたりと34歳ひとり)、ハンガリー人ひとり(34歳)、ブルガリア人ひとり
(46歳)は2017年からジョグジャ・バリ・バンドン・ロンボッ・ジャカルタで犯罪
を続けて大量のデータを盗んでいた。警察の調べでは、そのほかに欧米の銀行のものが2
百枚あるとのことで、いかにインドネシアがかれらにとって楽園であったかということを
証明しているようにも見える。


一味のひとりであるブルガリア人は現金引出し役を分担していた。その男がマンディリ銀
行ATMで現金引出しを行っているとき、迂闊なことをした。マンディリでない別銀行の
カードで金を引出したのだ。盗んだデータをバージンカードに移すとき、手違いがあった
のか、あるいはその仕事の担当員が雑な仕事でも大丈夫だと高を括ったのかもしれない。

いずれにせよ、その有様を銀行の警備員が見ていた。他銀行のカードでマンディリ銀行A
TMから現金を引き出せるのは異常なことだ。不審を抱いた警備員がその外国人に近付い
たところ、外国人はいきなり逃走をはかった。警備員の不審が証明されたことになる。

逃げ出した男は近くの川に近付くと、持っていたATMカードを川に捨てようとしたが、
追って来た警備員や通行人に捕まり、警察に突き出されるという一幕もあった。

一味のパスポートからは、ヨーロッパや東南アジアを含むアジア諸国の入出国記録が見つ
かっていることから、インドネシア中央銀行はアセアン諸国の中央銀行と連絡を取ること
を予定している。


インドネシア国内の銀行側は顧客の被害金額を補填した上でその口座をブロックし、早急
にATMカードを新しいものに交換する手続きを取るよう被害者に呼びかけている。この
ような被害防止のためにマグネチックテープ型カードをICチップ型に転換するプロセス
が進行中で、そのスケジュールは2019年末に50%、2020年末80%、2021
年末100%となっているため、犯罪者にはまだまだ蜜の季節が続くかもしれない。銀行
界がそのスピードアップをはかってくれれば、また状況は違ってくるかもしれないのだが。
[ 完 ]