「また、オンライン運送事業(後)」(2018年04月10日)

実はオンラインタクシー産業が始まったころ、運営会社のパートナーに加わった在来型タ
クシー運転手も少なくなかった。かれらはローンで車を購入した。いったいどんな計算を
したのか、かれらの机上の計算によれば、オンラインタクシー運転者になればローンを支
払い、ガソリン代を差し引いても、まだ何がしかを家に持ち帰れるというバラ色の解が出
ていたそうだ。ところが現実は大違いだった。

ローン返済に滞納が続けば、ローン会社は車両を取り上げる。こうして在来型タクシー運
転手上がりのひとびとは、また元の木阿弥に戻って行った。

一方、運営会社とパートナーの契約はアンフェアだと思うひとびとは、運営会社からもっ
と吐き出させようとして、opik あるいは tuyul と呼ばれる作戦を行った。opik とは 
Order FIKtif = OFIK = OPIK で、架空オーダーと架空運行を運営会社のオペレーション
システムに潜入させて、当該運転者に対する支払いを増やそうという手口だ。

tuyul というのは「妖怪トゥユル」をご参照ください。
http://indojoho.ciao.jp/141027_1.htm
http://indojoho.ciao.jp/141028_1.htm
http://indojoho.ciao.jp/141029_1.htm
http://indojoho.ciao.jp/141030_1.htm
要はひそかに金銭を盗むトゥユルのように、運営会社からいただくべきものを戴こう、と
いうことがらに掛けた命名かと思われる。


このオピッでは、セキュリティシステムをすり抜けて運営会社の業務管理システム内に侵
入し、オーダーや位置確認などを自在に操れるシステムをハッキングの才能を持つ者作ら
せ、それを使って実際に行っていない仕事を行ったかのように会社に思わせるようにする。
このシンジケートのメンバーになったら、毎月5万ルピアを納めなければならないそうだ。
会社側がアプリを更新すれば、かれらもぬかりなくそれに合わせてオピッシステムを更新
していく。会社側がセキュリティを強力なものに向上させてオピッシステムでは歯が立た
なくなると、アプリで指示された発注者を迎えに行き、発注者にオーダーをキャンセルす
るよう要請する。

要するに、会社に支払わないで、会社に払う金と同じ金額をわたしに払ってくれ、と言う
ことだ。人情がらみという面も使えれば、発注者の電話番号も住所も分かっているのだか
ら、いやな目に遭いたくなければ、という威嚇がらみの手法も使えるわけだ。

既に十万人の大台に乗っていると言われるオンライン運送事業従事者は、組織化されるな
ら十分に大きな勢力になっている。運送産業の一分野としてのみならず、経済的にも政治
的にも、ひとつの勢力として利用される条件は整いつつあると見てよいのではあるまいか。
[ 完 ]