「サバ缶寄生虫事件の教訓(前)」(2018年04月11日)

ライター: ボゴール農大食糧技術学教授、プルウィヤッノ・ハリヤディ
ソース: 2018年4月6日付けコンパス紙 "Belajar dari Kasus Cacing Ikan 
Kalengan"

世界中の国が国民に魚とその派生品の摂取を勧めている。サバ缶詰ももちろん、その中の
ひとつだ。その奨励は、起こるかもしれない健康上のリスクよりはるかに大きい効用を魚
の摂取がもたらすのだ、という調査研究を踏まえてなされている。

健康上のリスクとは一般的に、物質的・化学的・生物学的な魚の汚染に関連するものだ。
物質的汚染とは、魚肉を摂取対象に不向きなものに変えてしまう異物のことであり、化学
的汚染とはヒ素・カドミウム・鉛・水銀・セレニウムなどの無機質化合物やダイオキシン
・殺虫剤などの有機質化合物、そしてニトロサミン・抗生物質・ホルモンなどといったそ
の他の化合物によるものだ。生物学的なものとしては、病原体微生物・ウイルス・寄生虫
などが挙られる。

< 寄生虫と食品安全基準 >
魚に寄生虫がいるのは、ほとんどの水域におけるエコシステム上で平常な状態である。既
に発見されている魚の寄生虫は50種を超える。そのうちのいくつかは、適切な取扱いと
処理のなされていない魚肉を食べることによって寄生虫が生きたままで呑み込まれたり、
人間の体内に侵入後に消化器官内で生き延びることができたときに健康上深刻なリスクを
もたらしてくる。生きている寄生虫は人体内の食道・胃・腸の壁に付着してアニサキス症
を引き起こす。

つまりアニサキス症というのは、アニサキスの成虫や卵のいる魚肉を生のまま摂取するこ
とに関係しているということなのだ。だからアニサキス症防止の王道は生あるいは十分に
火の通っていない魚肉の摂取を避けることになる。


食品安全はたいへん重要なことであるため、健康な国民生活にもたらされるリスクを低下
させるべく、寄生虫対策は持続的に行われている。

国際食品規格機関コーデックス・アリメンタリウス(Codex Alimentarius)委員会(CAC)
はリスクマネージメントのための食品取扱いと処理のガイドラインを策定している。上述
したリスクに対する軽減努力もそこに含まれている。そのひとつが魚と水産品に関する実
施要領(CAC/RCP 52−2003)で、商業的水産業と水産加工業は寄生虫リス
クの低減をはかるために、規律と責任を持ってそのガイドラインを実践しなければならな
い。

しかし魚に寄生虫がいるのはほとんどの水域におけるエコシステム上で平常な状態である
がゆえに、漁獲者・集荷業者・産業界がリスクマネージメントをどれほど厳格に行ったと
しても、水産加工品が完璧に寄生虫から免れていることを保証するのは難しい。その理由
から、リスク調査を踏まえ上でCACは、いくつかの水産品で寄生虫に関する許容限度を
定めた。

(i) Standard for Quick Frozen Blocks of Fish Fillet, Minced Fish Flesh and Mix-
tures of Fillets and Minced Fish Flesh (CODEX STAN 165-1989)
(ii) Standard for Quick Frozen Fish Fillets (CODEX STAN 190-1995)
(iii) Standard for Smoked Fish, Smoke-Flavoured Fish and Smoke-Dried Fish (CO-
DEX STAN 311-2013)
には、食べることのできる魚肉1キログラム当たりの寄生虫許容限度が2匹と定められて
いる。生食用の魚肉にも、寄生虫が死ぬよう前もって冷凍処理を行うことが定められてお
り、最低限の処置としてマイナス20℃で7日間、あるいはマイナス35℃で20時間前
後の冷凍処理が命じられている。(CAC/RCP 52−2003)[ 続く ]