「ミナンカバウの旅(1)」(2018年04月25日) 南のプシシルスラタン(Pesisir Selatan)県から北のパサマンバラッ(Pasaman Barat)県に 至る19県市を擁する西スマトラ州はミナンカバウ(Minangkabau)とも呼ばれる。 海岸・島々・高原・峡谷・渓谷・滝・湖などの観光スポットに満ち溢れたミナンカバウの 地は、旅行者の天国だ。スマトラ島の西側をアチェからランプンに至る脊梁山脈ブキッバ リサン(Bukit Barisan)が貫き、高原や山岳地帯にできた湖は訪問者に一味異なる慰めを もたらしてくれる。 街道から見下ろす緑に包まれた村は水田とバゴンジョンを備えた建物がアクセントを与え、 人影まばらな家々は良く手入れされた上に色とりどりの花に包まれている。かれらの暮ら しがいかに精神的な余裕に満ちているかを、そのたたずまいが物語っているかのようだ。 ミナンカバウはまた、食の天国でもある。世界ナンバーワン料理を獲得したことのあるル ンダン(rendang)、そしてデンデンバコトッ(dendeng bakotok)、海岸部へ行けば、新鮮な 魚。州内のあちこちにあるレストランはおなじみのあのパダンレストランスタイルだが、 パダン料理店の看板を掲げる店がないのは当然の理だろう。 コンパス紙記者が2018年2月に楽しんだ西スマトラ州の旅にわれわれも連れて行って もらうことにしよう。 2018年2月14日 午前7〜8時: パダン海岸 パダン市内中心部からパダン海岸まではおよそ1キロ半の距離。ほんの10分ほどで着い てしまう。週日にもかかわらず、早朝にパダン市民はパダン海岸へ向かう。 ひとびとは歩道を散歩し、ジョギングし、河口をめぐり、小石の敷き詰められた場所では 裸足で徒渉して足の裏を刺激する。 今朝の見ものは漁民たちが行う、地元でmaelo pukekと呼ばれる地引網だった。漁船で沖 まで運ばれた巨大な網を浜辺から綱で岸まで引っ張り寄せる。獲物は参加した漁民の間で 均等分配される。伝統的な民衆の知恵は依然として実践されているのだ。 夕方のパダン海岸もまた、素晴らしい大自然の美をきっと楽しませてくれることだろう。 午前10〜12時: パリアマン パダン市から北へ向かっておよそ2時間の距離にパリアマン(Pariaman)市がある。車で行 く代わりに、パダン市内シンパンハル(Simpang Haru)駅から鉄道を使えば1時間半の旅だ。 インド洋に面した港町としての歴史を持つパリアマンでは、海洋観光を楽しむことができ る。ガンドリア(Gandoriah)、カタ(Kata)、パウ(Pauh)などのビーチと沖合に浮かぶ島々 でマリンスポーツを存分に楽しめるし、北部のアパル(Apar)地区にはウミガメの繁殖施設 が2009年に設けられて、これまでに何万匹ものカメの子が海に放されている。 パリアマンで忘れてならないのが、ナシセッ(nasi sek)。sekというのはSEratus Kenyang をもじったものだそうだ。バナナの葉に包まれたほんの一握りの飯と付け合わせのおかず を「満腹百回」などと呼ぶのは、ミナン人のしゃれっ気であり、心意気であるにちがいな い。昔は100ルピアでそれが食べられたそうだが、今や魚頭グライ・ジェンコルグライ ・魚肉のチョイスとサンバルおよびシンコン葉が付いて1万ルピア前後になる。[ 続く ]