「1千万の中国人肉体労働者(2)」(2018年05月09日)

実は、中国人肉体労働者1千万人の話は2015年から浮上している。元々は現政権の観
光振興による外貨獲得政策の一環として、中国人観光客年間1千万人という大風呂敷を広
げて中国人の観光入国にビザフリーを与えた。

そんなことをすれば、観光客1千万人でなく労働者1千万人になりかねないぞ、と釘を刺
したのが、ユスリル教授だったそうだ。ところがその辺りの経緯が消え去って、民衆の頭
の中には中国人労働者1千万人という恐怖だけが焼き付けられることになった。


その衝撃は、インドネシア労組同盟(KSPI)が17年2月に出した表明で、更に一般
民衆の脳裏に定着する結果になった。
「いくつかの地方でわれわれはデータをつかんでいる。身近なところではプロガドンにあ
る鉄鋼会社6社だ。現場作業を行っている不法就労外国人が月給1千万ルピアを得ている。
かれらはユーロと中国元で契約しているからだ。
プロガドンだけでなく、カラワン・ブカシ・セラン・ランプン・タングランの工業団地も
不法就労外国人のセンターになっている。」同盟総裁はそう述べた。

政府は不法就労外国人をすべてひっ捕らえて国外追放し、一方で新規に中国人不法就労者
が入ってこないようモラトリアムを行え、と労働界は政府に対して要求している。国会が
そこに巻き込まれないはずはない。

政府が制定した外国人就労者雇用に関する2018年大統領規則第20号について労働界
はさらに、ジョコウィ政府はなさずもがなのことをした、と批判した。批判の矛先はまず
第十条に向けられた。RPTKAの義務付けを免除すれば、抜け道に利用されるだけのこ
とだ、と言う。次いで、いくつかの許認可を二日以内で下すようなことをすれば、内容チ
ェックに十分な時間が取れるわけがない。

更にインドネシア人の後継勤労者がひとりでは少なすぎる。十人にして外国人就労者にか
れらを教育させるようにせよ、と付け加えた。

インドネシア労組同盟がつかんでいる肉体労働・現場作業を行っている外国人就労者の数
値は全国で15万7千人だそうだ。
「政府は外国人就労者数は8万5千人だと言っているが、それはリーガルな就労者数であ
り、専門知識や技能を持っている者だけの話だ。政府は肉体労働者などいないと言ってい
るが、プロガドンでも、カラワンやタングランあるいはブレレンへでも行って見るがいい。
外国人で現場作業をしている者はいっぱいいる。フォークリフトの運転手をしている者な
ど、すぐにわかる。かれらは同じ業務を行っていてもインドネシア人従業員より給与は3
倍も多い。インドネシア人は360万ルピアで中国人は1千万ルピアだ。プロガドンの工
場に中国人作業者はおよそ3割いる。こんな不公平があってよいものではない。」

今回政府が制定した外国人就労者雇用に関する2018年大統領規則第20号は廃止し、
建前と実態にはなはだしい落差のある現在の外国人就労制度を、実態を汲み込む形で抜本
的に改正せよ、との要求を同盟総裁は述べた。このようなことをしていれば、ジョコウィ
政権の人気は転落の一途になるだけであり、この実態の裏側には中国政府がからんでいる
のではないか、とも述べている。[ 続く ]