「ウブッの旅(後)」(2018年05月17日)

4月14日
午前7時: トゥガララン
消え残った霧に包まれた段条の水田が示す朝のパノラマは、既に世界中が知っている。ウ
ブッの中心街から5キロほどの距離に、スバッ(subak)システムで維持されているトゥガ
ララン(Tegallalang)水田地区が広がっている。丘の斜面に整然と設けられた水田の畦には
バナナやヤシの木がアクセントを添え、絶好の激写スポットを提供している。時おり通り
過ぎる農民の姿も、激写の成果に彩りを添えるものだ。
太陽がまだ灼熱の光を投げかけない朝の爽やかな空気の下で、トゥガラランの水田には早
くも観光客の姿が目立ち始めた。道路脇でまず撮影。その次には、ひとりまたひとりと、
水田の畦に脚を進める。

午前10時: サレナグン宮殿
町の中心部にあるサレナグン宮殿(Puri Saren Agung)にも大勢の観光客が訪れている。宮
殿の敷地内には朝から夕方まで自由に入ることができる。暑さを増し始めた大気の下で、
宮殿内の豊かな緑が居心地の良さを訪問客にもたらしてくれる。
宮殿の広間で子供たちが舞踊の練習を始めたようだ。まだ若い先生の指導に合わせて、子
供たちの身体はしなやかに動く。それに気付いた観光客が近寄って来て、カメラの砲列を
敷いた。本番は夜だ。きっと夜も、見物客で満員になることだろう。
この王宮には、今も王族が住んでいる。バリの伝統文化はここで維持され、時代の変化に
即して磨きが加えられていくにちがいない。

午前12時: アートマーケット
サレナグン宮殿の向かいにアートマーケット(Pasar Seni)がある。売り物はバリの伝統工
芸品や土産物がほとんどで、スカワティ(Sukawati)市場とたいして違わない。バリスタイ
ルのさまざまなアクセサリー類・バッグ・財布・Tシャツ・バティックシャツ・ブラウス
・スカート・帽子・パレオなどがより取り見取り。飾り物や置物、木彫りや木像、楽器ま
で実にバラエティに富んでいる。
ここではインドネシアの売買慣習であるタワルムナワルが生きている。買い手は売り手の
言う値段を値切ってこそ、互いのヒューマンコンタクトが出現するのである。
店や売場がひしめきあって並ぶパサルスニをぶらつきながら、気に入った物をあれこれ物
色していたら、いつの間にか買い物袋ふたつがいっぱいになっていた。[ 完 ]