「継続する児童婚」(2018年05月18日)

「娘がまだ子供であっても、申し込まれたら断れない。一度断ると、娘が大人になっても、
どこからも申し込みが来なくなるかもしれない。村では、もらいてのない娘はその家の恥
ですから。」

結納金がもらえて、おまけに口減らしになるという経済効果が貧困家庭にもたらされるの
は垂涎ものだという認識がある。だが児童婚の動機はそこまで単純なものでない。村落で
の社会生活は、その地域独特の生活規範を生み出し先祖代々維持されてきた。

いくら児童婚をやめろと、政府から人権団体、そしてマスメディアが声をそろえて叫んで
も、貧困家庭に経済的余裕を持たせるのは不可能事であり、おまけに村落民の価値観をか
れら自身に変えさせないかぎり、外からいくら指導勧告しても容易なことでは変化しない。

加えてメディアから届けられる難しい話へのリテラシーは低く、更に若年層が社会風潮か
ら影響される性的自由の観念が児童婚の増加を促している。もらいてのない娘は家の恥か
もしれないが、コブ付き娘はもっと大きな劣等視と、おまけに口を増やすという経済リス
クをその家にもたらすのだ。


2017年11月26日、西スラウェシ州ポレワリマンダル県で高校一年生16歳の男女
が結婚を公認された。18年4月5日、西ヌサトゥンガラ州東ロンボッ県中学一年生の男
子と中学二年生の女子が結婚し、ソーシャルメディアにそのビデオがアップされた。

18年4月23日、南スラウェシ州アガムバンタエン地裁が16歳と14歳の公式婚姻を
承認した。このふたりは最初婚姻を申請していたが、宗教役場が年齢を理由に却下したた
め、シリ婚を4月1日に行っていた。これらが最近公になっている児童婚の実例だ。


ポレワリマンダル県辺境のカルマンマン村住民Hさん48歳は、14歳で結婚したと物語
る。実家は貧しかったが、結婚しても貧しさは変わらなかった。毎日畑で野菜を育て、そ
れを市へ持って行って売る暮らしが続いた。同じように夫から暴力を振るわれることも日
課のようなものだった。娘はそんな家庭生活に耐えられず、家を出て、そして児童婚をし
てしまった。

別の家庭でも、娘に申し込みがあり、受けなければ行かず後家のリスクが高まるのを心配
するあまり、4百万ルピアの婚約金を受け取った。

今23歳のアンティさんは16歳の高校生のとき、フェイスブックで知り合った別の村の
男性と結婚した。ところが4カ月後に実家に戻って来た。既に妊娠していたかの女は早産
し、赤ちゃんは亡くなった。ところが夫はいつまで経っても迎えに来ず、結婚はただの言
葉だけになってしまう。村人はかの女を「子ども後家」と呼んでいる。

23歳のイマさんは高校2年生のときに、カリマンタンへ出稼ぎに出た恋人を追って一種
の駆落ち婚をした。今は5歳と1歳のふたりの子供を持つ母親だが、かの女の体つきはど
う見ても、子供にしか見えない。

中央統計庁2015年社会経済調査によれば、全国の児童婚発生率最多州は西スラウェシ
州であり、結婚総数の3.7%が児童婚で占められている。