「もっとも長い5分間(前)」(2018年05月21日)

2018年5月16日(水)、リアウ州プカンバル市にあるリアウ州警察本部は厳戒態勢
にあった。大量のナルコバを押収して関係者を逮捕した事件に関する記者説明会がその日
行われることになっている。州警察長官が自ら説明を行う予定だ。

折しも5月8日以来、デポッ・スラバヤ・シドアルジョでテロ活動が連続し、14日には
スラバヤ市警本部が被害を受けた直後だった。すべての警察機構に第一級警戒態勢が指示
され、管区内の治安と平行してテロ組織の標的とされている警察も自己防衛の態勢を強め
ている。

コンパス紙記者は午前9時に州警本部を訪れた。ガジャマダ通りにある通用門では防弾チ
ョッキに長銃を持った要員が警備に当たっている。記者は簡単に通してもらえたが、入ろ
うとした一般市民で拒まれたひともいる。

建物玄関まで行くと、奥の広間には机の上に押収されたナルコバが山積みされ、また長官
の説明に使われるための資料が壁に貼られてあり、報道関係者が何人もそこに来ていた。
説明会の進行や整理のために本部職員も三々五々集まっている。

そんなとき、玄関に近いスディルマン通りの正門で大きな音がした。記者は爆弾かと思っ
たが、他社の記者が「自動車がぶつかったみたいだ。」と言った。現場を見に行こうと動
き出したのは、報道人の習性にちがいない。ところが次の瞬間、正門からこの玄関に至る
アクセス路にいた警官たちの怒鳴り声が聞こえた。その声の中を白色アヴァンザが一台、
玄関に向かって突っ込んで来た。ナンバープレートはBM1192ROだった。

そのとき、警備に当たっていた警官のひとりがアヴァンザの進行を止めようとして反対に
車に跳ね飛ばされていたのだ。かれは病院で死亡した。

記者は正門とアヴァンザを見やって判断した。その車が半開きの正門を押し破って侵入し
てきたのだ。車が玄関前でスピードを緩めると、黒づくめの男がふたり、抜き放った長剣
を手にして躍り出てきた。あちこちで「テロリストだ。テロリストの襲撃だ。」という叫
び声があがる。[ 続く ]