「滞在資格違反者取締りが活発化(後)」(2018年05月22日) だからこの国では、潜入して民衆社会に溶け込んでしまえば、滞在資格違反取締りが身に 及ぶ可能性は最小のものになる。そこが日本のような単一民族国家との違いだ。日本でな ら、毛色の違う人間はいくらスラム社会の中に溶け込もうとしても、すぐに見つかってし まうのである。 今起こっている外国人就労問題は、2019年に大統領選挙がなければここまで盛り上が っていなかったはずだ。来年の選挙を目指して対立候補者陣営が現職大統領の失政を際立 たせるために行っているキャンペーンであることが明白だからである。 内容のよくわからない、客観的数値で計れない無許可就労者の数「白髪三千丈」を言い立 てて国民をその気にさせれば、許可交付就労者しか手掛かりを持たない政府はコーナーに 追い詰められていく。 政府はその手掛かりを握りしめて許可交付就労者の監視を強め、許可外活動を見つければ 鬼の首でも取ったかのように言い立てて、自分たちが職務を果たしていることを国民に証 明しようとする。 法規通りの手続きに従って公明正大に法的背景をクリヤーしていても、ついもののはずみ でフォークリフト作業の手伝いでもしようものなら、どんな災禍が降りかかってくるかわ からない。一過性だとはいえ、苦難の時代であることは疑いもない。 チレボンでは、インドネシアに潜り込んでインドネシア人になり切っていたマレーシア人 61歳が、故郷への再訪を望んでインドネシアパスポートを申請したことで藪蛇になった。 2004年からインドネシアに住み着き、インドネシア女性を妻にして、婚姻証書・KT P・KKなどすべての書類を整え、インドネシア人として暮らしてきたこの男がパスポー ト交付申請を出した。書類審査は通過してインタビューと写真撮影が行われた日、マレー シア語訛りが強いことに疑惑を抱いた担当官が本人をイミグレ調査部門に引き渡した。 取調べから捜査に発展し、家宅捜索が行われてかれのマレーシアIC(身分証明書)が発 見されたのである。イミグレ法に従えば、最長5年の入獄刑がかれを待ち受けている。 潜り込んで暮らすのにたいした障害がないのは確かだが、そこから出ようとするとそれま での苦心が水の泡になりかねないのもインドネシアだ。すべてを甘く見ると痛い目にあい かねない。[ 完 ]