「ラマダン観光」(2018年05月25日)

イスラムのラマダン月は断食の一カ月間だ。インドネシアでプアサ(puasa)と呼ばれてい
るこの断食を観光客誘致のツールに使おうというアイデアが上がっている。とは言っても、
インドネシア人ムスリムがラマダン月に行っている生活習慣を非ムスリムに見物してもら
おうというようなものでは決してない。誘致のターゲットは諸外国にいるムスリムなのだ。

断食は地上に日光が差し込む瞬間から開始されて、太陽が没する瞬間まで続けられる。今
頃の時期、北半球の高緯度地方は日照時間が長いのである。インドネシアのような赤道近
辺に位置しているところでは、一日の日照時間がだいたい一年中12時間くらいだが、ヨ
ーロッパやアメリカ北部で今頃は16時間くらい太陽が出ている。

断食時間が長いことは、断食の準備としてのサウルと呼ばれる夜食や睡眠が不十分になり、
断食しながら日々の生産性を維持することが期待されているムスリムにとって過酷な条件
を与えることになる。だから断食の務めはインドネシアで、より健康な形で行ってはどう
か、というのがラマダン観光誘致の主旨になっている。


グローバルムスリムトラヴェルインデックスで世界第二位に伸びあがったインドネシアが
ムスリムに対してラマダン観光を提案するのは、理にかなったものだと観光大臣も評価し
ている。この観光ツアーを売り出したことで、観光省は今年のラマダンからイドゥルフィ
トリの期間に40万人のムスリムツーリストがインドネシアを訪れるだろうと予測してい
る。

既に南アフリカからインドネシアでラマダン月を過ごすために観光客が訪れ、また米国か
らもタシッマラヤのプサントレンを訪れてラマダン月を過ごそうとしている観光客もいる。
インドネシアの旅行代理店業界は従来プアサ期間にインドネシア人を小巡礼と呼ばれるウ
ムロにメッカに向けて送り出すのが一般的だったが、今ではその傍らに、中東からインド
ネシアに観光客を連れて来ることも増加しており、ラマダン月というグローバルイスラム
の共通行事がインドネシア観光への動機付けをもたらしているようだ。