「バゲージ泥棒(前)」(2018年06月04日)

インドネシアの空港の国際線バゲージピックアップでいつも不安になるのは、入国審査場
にいるときに何かの間違いでバゲージが素早くターンテーブルに乗り、自分がまだそこに
たどり着いていない間に誰かが持って行くのではないかという心配があることだ。いや、
国内線ですら、それは起こり得るのである。ただ国内線の場合、わたしはさっさとターン
テーブルに行って待ち構えるからそれほど心配はしないし、幸いにして?何かの間違いで
乗客が降りてくるのより早くバゲージがターンテーブルに乗ることも起こったことがない
から、いいようなものだが。

コンパス紙の投書を見ても、だれかが間違えて他人のトランクを持って行くことは現実に
起こっているし、ましてや故意に盗もうとすればやり方はいくらでもあるように思える。

ある時期、国内線でバゲージのタグと搭乗券に付けられた半券をチェックすることが行わ
れていて、わたしは大いに安心したものだ。そのころは外国へ行かなかったから、国際線
の状況は知らない。ところが最近、それはあまり励行されなくなったようだ。多分ツーリ
ストが苦情したのだろうが、インドネシア事情を知らないひとは盲蛇に怖じないようだ。

そしてやはり、バゲージピックアップ場での盗難は起こっていた。ソーシャルメディア上
で流れるバイラル情報の中に、スカルノハッタ空港第3ターミナルのバゲージピックアッ
プ場のターンテーブルから自分のトランクが盗まれたという書き込みが広まったのである。
スカルノハッタ空港警察はその書き込みを聞き捨てならぬものと見た。

捜査班が編成されて、捜査が開始される。聞き込みや監視カメラ画像が調べられて、その
シーンが見つかった。青年が大型トランクをひとつ持ち、もうひとつをターンテーブルか
ら取り上げていた。その青年のトレースが空港内の全監視カメラ映像で行われ、そして青
年が乗った乗用車が駐車エリアから外へ出るところまでのものが判明したのである。乗用
車を追って警察が動きを開始する。

車の所在が突き止められ、その日、その車を使った者の情報が洗い出された。捜査班はタ
ングラン県ティガラクサにあるその者の住居へ向かう。[ 続く ]