「バゲージ泥棒(後)」(2018年06月05日) 何ということだろうか、警察が追っていた容疑者は中学三年生15歳の少年だったのだ。 体格は既に大人びていて、外見からはそんな子供にまるで見えなかった。おまけに犯行手 口も堂々としたものだったから、子供のしわざとも思えなかったわけだが。 少年はカッコいいトランクに憧れを抱いており、自分の欲しいトランクをどうしても手に 入れたいという欲求が強まった挙句の犯行で、17年7月以来5回犯行を繰り返して、自 宅の自分の部屋に盗んだトランクを10個隠していた。そしてトランクの中身の衣類等を 合わせて自分のコレクションとして愛玩していたらしい。 犯行の日、少年は誰かから乗用車を借り、自分で運転してスカルノハッタ空港第3ターミ ナルへ行く。運転免許資格年齢前の少年が乗用車を走らせているのがジャカルタなのだ。 というか、これは全国的とも言えるのだが。 少年は到着ターミナル出口から逆行して中に入る。もちろん出口には番をしている係員が いるが、「取り忘れたトランクがある。」というのがかれの必殺エクスキューズだ。更に トランクをひとつと航空券か何かが入っているように見えるケースを手にして、到着した ばかりの乗客の姿を偽装することも忘れない。その結果、係員は身分証明書を提示させる こともせずに中に入ることを許可する。 そしてターンテーブルからカッコいいトランクをピックアップすると、それを持って再び 出口へと向かう。5回の犯行でただの一度も出るときに航空券や搭乗券あるいはバゲージ 半券などをチェックされたことがない、と少年は取調べに答えている。 この事件の結果スッタ空港運営会社アンカサプラIIは対応策として、到着ターミナル出口 の担当員を増やして、乗客が持って出ようとしているトランクのタグと搭乗券に付けられ た半券の照合をランダム実施すること、到着ターミナル出口から中に入ろうとする者はす べて航空券とKTPの提示を求めることなどを決めた。 高価なカッコよいトランクを持って飛行機に乗るのは考えものかもしれない。[ 完 ]