「ゴロンタロの旅(3)」(2018年06月06日)

来訪者は麓から要塞まで348段の階段を歩いて登るか、それとも二輪四輪の通れるアス
ファルト道路を車で登るかの選択に迫られる。階段にも四カ所の休憩場があるから、怖れ
るには及ばない。
要塞は円形の三つの建物から成っていて、石で積み上げられている。その建造に際して、
スラウェシの原生鳥マレオ(maleo)の卵が石と石との接着剤に使われたと地元民は信じて
いる。マレオは日本名をセレベスツカツクリと言い、絶滅が懸念されている保護鳥だ。
この要塞の由来は諸説ある。イルタ王(Raja Iluta)が建てたという説では、ポルトガル船
が悪天候と海賊の襲撃から逃れて避難してきたとき、王は保護を与えてそれを建設させた
ものの、途中まで建設したときにそれがポルトガル人の奸計であることを見破り、ポルト
ガル人は討ち払われた。
それから数十年後、青年期以来諸国回遊の旅に出ていたイルタ王の子供のひとりナハ王子
がそれを発見した。だからその要塞にはオタナハという名前が付けられている。オタは要
塞を意味し、ナハ王子の要塞という意味でオタナハと呼ばれているそうだ。

20時: ムルニ地区
地元民のライフスタイルに触れて見なければ、本当にその地方を知ったことにならないだ
ろう。ゴロンタロ人が昼間の疲れをどのように癒し、何を飲食して、どんな遊びをしてい
るのか、ムルニ地区(Kompleks Murni)に行けば手に取るようにわかる。
まずは赤ショウガのゆで汁に赤砂糖を溶かしたサラッバ(sarabba)をすする。お好みでミ
ルクや卵を混ぜてもよい。「何かお腹に」というのなら、ゴロホ(goroho)バナナはいかが?
これは糖分がきわめて低いから、まるでジャガイモを食べているようだ。サンバルトラシ
やケチャップで味付けをどうぞ。
ピーナツもよいだろう。カチャンバミニャッ(kacang baminyak)はピーナツを砂で煎った
もの。干してから煎ったものはカチャントレ(kacang tore)と呼ばれる。
このムルニ地区には若者や家族連れが夜のゴロンタロの涼と空気を求めて集まってくる。
道路脇や路地の奥にはコーヒーワルンが目白押しだ。[ 続く ]