「ネット上のバハサガウル」(2018年06月07日)

ライター: スエーデン語インドネシア語辞典編纂中、スエーデン在住、アンドレ・モレ
ン
ソース: 2005年6月18日付けコンパス紙 "Gapapa Klo Blom Tau 

インターネット上のさまざまなインドネシアのフォーラムにわたしは最近になってやっと
顔を出すようになった。そこでお目にかかるインドネシア語にわたしは驚かされた。他の
メディアに出てくる文章語ととてもかけ離れていたのだから。

インドネシア語の文語は常にきわめて公式の、あるいは少なくともそれに近付けようとす
る、国語学者たちが合意した標準インドネシア語で書かれるものというのがわたしの印象
だった。ところがインターネットの諸フォーラムでは、わたしの印象が即座に崩壊した。

なぜなら、標準と考えられているインドネシア語はそこでほとんど目にすることができな
いのである。そこで見られるインドネシア語は、少なくともわたしにとっては、クリエー
ティブで新しいものだった。その特徴を下記しようと思う。

第一の特徴は、言語形態がたいへん口語に似ていることだ。tidak tahu が gak tau になり、
kalau tidak salah は klo gak salah となる。口語に似ていることに加えて、文語の省略も
行われる。言い換えると、速記するために単語が短くされる。enggak apa-apa を短縮し
た gapapa はベストサンプルだろう。ほかにも cw(cewek), dah(sudah), mo(mau) などが
ある。奇妙なのは、文字をひとつ余分に付け加えることもなされる。ただし、その文字が
発音されることはない。たとえば sih がネット言葉では sich、deh は dech と書かれたり
する。c が加えられたら短縮にはならないし、またそれで発音しやすくなるわけでもない。
若者たちにとって、dech は deh よりもカッコよいという理解ができそうだ。

次の特徴は、このネット言葉へのブタウィ語の影響がとても強いことだ。確かにそれらネ
ットフォーラムの参加者はジャカルタっ子が多い。しかし別の理由もありそうだ。たとえ
ば村落部のひとびともこのジャカルタがリードするモダンインドネシアのシーンに、ブタ
ウィ語の影響を受けたこのネット語を用いて参加する。たとえかれらの日常生活言語とは
異なっていたとしても。ブタウィ語の影響がもっとも顕著なのは gw、つまり gue という
一人称の使用だ。だから、こんな文が出現しても、面食らってはいけない。klo gw gak 
setuju, gw rasa skrg....  skrg というのは sekarang の短縮形だ。

三つ目の特徴は英語の影響。インドネシアのメディア界が英語の影響にすっぽり浸かって
いることは言うまでもないことであり、つまりはネットフォーラムの専売特許でないとい
うことなのだ。

とはいえ、いくつかのサンプルはここに上げるにふさわしい。たとえば、uda lihat cover 
belakangnya blom?, gw abstain aja dech. 後者の意味は、saya memilih untuk tidak 
mengungkapkan pendapat saja deh. 英語の口語形すら登場する。coz は because の短
縮形だ。あるスマホのフォーラムでわたしはこんな文章を見たことがある。

gw seh nunggu banget XX(あるスマホ製品) coz gw hobby denger music. その関連で、
英語の短縮語あるいはグローバルネット言葉も使われている。LOL(laughing out loud), 
IRL(in real life), BTW(by the way) などお手のものだ。

特徴は他にもある。alasan が alazan というようにsがzに変えられたり、qの文字をki 
と読ませてkita を qta と書くような方法だ。それらはカッコよさを追及して行われてい
ると考えられる。

この言語は著しい発展を示して、ネットガウル社会におけるインフォーマルな標準単語が
どんどん作られて行くと推測される。今現在ですら、mo, gw, tau などは既に標準語の位
置を占めている。嬉しいのは、言葉の意味が用意に推測できることだ。つまり、まず 
gapapa klo belom tau なのである。