「人材争奪戦に勝てるか?(前)」(2018年06月28日)

インドネシアの優秀な人材が国内で国家建設に携わることが国にとっては理想だが、そん
な人材の中には国内での活躍の場、あるいは少なくとも自分が築き上げたい自分の人生の
場を得ることができずに、外国へその場を求める者が少なくない。

国としてはもちろん、その状況を改善しようと考えてはいるが、なかなか細かいところに
まで手が届かず、トータルコーディネーションができないまま、諸省庁が自分の枠内で部
分的なことを行っているという印象が強い。グランドデザインが作られていないことが、
そんな状況を招いていると言えるだろう。


インドネシアにも科学オリンピックで優勝したり、高評価を得る生徒が少なからずいる。
そのような優秀な人材が見いだされた時、政府は奨学金を付けて国内の大学に勧誘するが、
科学オリンピックで優秀さを示した分野の学科に進むことを条件にする。そして奨学金の
見返りは国内の学士号取得だ。

それは多数の科学オリンピック高成績者にとってたいした魅力のないものであり、かれら
は米国・韓国・シンガポールなどの大学に進学している。同じように奨学金が与えられて、
専攻分野に関する自由度ははるかに高く、おまけに他の恩典まで得られるのだから。

シンガポールは世界中から優秀な人材を集めて国を豊かにする方針を採っている。201
2年には外国人学生8万4千人が国内のさまざまな教育機関に在籍しているとのことだ。
政府は奨学金を与え、その見返りにシンガポールの法人に就職することを希望する。シン
ガポールに登録されている世界中の企業がその対象になる。もちろんシンガポール企業の
インドネシア支社に就職することも、十分にその希望を満たすものだ。

シンガポール国立大学を卒業したインドネシア人学生の話では、学費を全額奨学金でまか
なってくれたほか、月に1,100から1,350Sドルの生活費まで支給してくれ、宿
舎まで与えられたそうだ。そしてイミグレーションが発行するスチューデントカードはま
るでパーマネントレジデント並みの効力を持ち、買物すると店が割引を付けてくれ、シン
ガポールに入国する際にはタップインパスポートで行列などせずに入国できる。インドネ
シアに帰ってくると、イミグレで長い列に付かなければならない。

公共政策学で学位を取ったこの学生は、シンガポールの企業で働く条件に一定期間の猶予
が付いていると語る。インドネシアの会社を経験してみることが可能なのだ。とはいえ、
シンガポール国立大学卒業生ネットワークでかれはシンガポールにつながっている。就職
のオファーや諸活動の勧誘がかれのもとに届けられる。[ 続く ]