「暴力犯罪社会の常識(前)」(2018年07月12日)

首都警察は2018年7月3日から8月3日までの期間、環境浄化作戦と銘打ったキャン
ペーンを開始した。路上犯罪粛正作戦である。メインターゲットに置かれたのは、路上や
公共スペースで行われているひったくり・強奪・強盗・恐喝・二輪車窃盗などの犯罪だ。

開始されてから7月5日までの三日間に387人を発生事件の関連で取調べ、そのうち7
0人が容疑者として留置された。犯罪を犯したことが明白で、しかも立証・送検できるケ
ースがそれだけだったということであり、取調べ後釈放された者が無罪だったかどうかは
別問題だ。

その発生事件の対処行動の中で、27人は捜査員から銃撃され、そのうちの3人は死亡し
た。捜査員による民間人射殺行為は、民間人が武器を持って捜査員を襲撃し、捜査員の身
が危険にさらされた場合に免罪になるという決まりになっており、いわゆる自己防衛原則
が適用されている。

しかしオレンジテントシンジケート壊滅作戦で首都警察長官が飛ばした檄は、「自己防衛
原則の適用をうるさく言わないぞ」という意味に取ることができる。結局のところ、捜査
員の越権行動も警察内部での賞罰審査の手の中にあるということなのだろうから。


7月6日には首都警察本部オーディトリアムで記者発表が行われ、70人の顔見世が行わ
れた。首都警察広報部長は、時代は既に変わってきているのだ、と最新のジャカルタ路上
犯罪の特徴を説明した。

まず年代的には、従来の25〜35歳がメインだった路上犯罪者は、今回の73人中のマ
ジョリティが15〜21歳だったという事実から、過去の常識の位置に押し流されてしま
った。

薬物検査ではシャブの使用者が目立っており、シャブを買う資金欲しさの犯罪というのが
動機の主流を占めている。かれらが狙う物品はスマートフォンで、簡単に売り払える上に
一個50万ルピア程度の金になる。

広報部長は、これまで唱えられていた犯罪学上の諸理論はこの三日間の状況を見る限り、
妥当性を持っていない、と言明した。
「風船理論は当たっていない。あるところを押せば別の個所が膨らむというその理論のよ
うにはなっていないのだ。犯罪は都内にも近郊にも増加していて、都内から近郊に犯罪が
移っているという事実は見られない。
犯罪者の世界におけるベビーブーマー関連での世代交代という理論も、それを裏付ける現
象はまだ見られない。
地方部貧困者の上京でジャカルタの犯罪が増加するという理論も現実のものではない。こ
の理論によるなら、上京者は30〜40代の年齢に達していることになるが、今回見られ
た年齢ブラケットは正反対の現象を示している。
これは社会解体現象によるものだ。若者は金が欲しい。スマートフォンを盗み、奪い、そ
して売る。得た金でシャブを買う。」
[ 続く ]