「ワニ3百匹虐殺事件を見る(前)」(2018年07月23日)

西パプア州ソロン県マリアッ地区クラマル町にあるCVミトラレスタリアバディ社の商業
用ワニ養殖施設で起こった292匹のワニ虐殺事件を、単なる復讐を目的とした野蛮さ発
露の現象とする見方は浅薄に過ぎないだろうか?

その種の猟奇精神と外国のできごとに対する奇矯観を煽る見地からの解説は、世界中の人
間という生き物が持っているユニバーサルな性質を日本人の目から覆い隠し、日本人が世
界人に成熟する機会を狭めているように思えてならない。誰が何を目的にして日本という
国をそんな方向に向かわせているのだろうか?


ミトラレスタリアバディ社は2008年に商業用ワニ養殖事業の許可を得て、ソロン市中
心部からおよそ30キロ、最寄の住宅地からは1キロ離れた場所にワニ養殖施設を設けた。
事業認可は2018年12月を期限として2013年に延長されている。

およそ1Haの養殖施設はトタン板のフェンスで囲まれ、その中には親ワニ一対用のプー
ル(6x6メートル深さ3メートル)がひとつあって、それは高さ2.5メートルのコン
クリート塀で囲まれている。それとは別に同じ広さで深さ1メートルの子ワニ育成用プー
ルが5つあって、高さ1.25メートルの塀で囲まれている。

この施設は一般者無断立入禁止が表示され、施設入り口には警備員がいて、不断の任務に
就いている。この養殖施設で2018年7月13日に事件が起こった。

近隣住民スギト48歳が親ワニ用プールの中で親ワニに襲われて死亡したのである。
警備員は、親ワニプール内から「助けてくれ」という人間の叫び声を聞いて駆け付けた。
ワニに咬まれて血まみれになった男の姿がそこにあった。会社側はすぐに対処して血まみ
れの男を引き上げたが、かれの生命は救われなかった。

スギトはその日、家畜飼料として草の刈り集めに出たらしく、確かに養殖施設の中は草が
一面に繁茂していたことから、かれの目には魅力的な刈り場と映ったのだろう。ところが
事件はそれだけで終わらなかった。

近隣住宅地住民およそ4百人が手に手に武器や鈍器を持ち、垂れ幕まで掲げてそのワニ養
殖施設に討ち入って来たのである。警備員をはじめ、会社側は暴徒を制止することもでき
ず、ただ見守るばかりだったという。[ 続く ]