「アンチ中国感情は政治ツール(終)」(2018年07月27日) 皮肉なことに、オルバレジームは一部華人クロニーに対して特典を与えたが、他の華人事 業主の多くは抑圧され、政府独占ビジネス方針の逆境に全力をつくして耐えなければなら なかった。そんな中で忘れ去られてしまったのが厚い層をなしていた貧困華人だ。かれら は忘れ去られて、経済格差とその平準化論議の中に場を与えられることすらなかった。西 ジャワ州に住む華人の儒教界著名人のひとりはかれの宗教コミュニティについて、ドイツ を本拠とするキリスト教一宗派の攻勢にさらされている、と語っている。経済要因のため に宗旨替えしたコミュニティ構成員は少なくないそうだ。かれの憤りは隠すに隠しおおせ ないもののようだった。 < 共同アジェンダ > 政敵から「華人子孫でコミュニストだ」と誹謗されたこの国の大統領はジョコウィただひ とりだ。中国と共産党の問題はオルバ政治構造の恒久化に根差している。過去の過ちを正 し、その上で民族の善と一体化のための代替策あるいは合意点に全員一致で到達するため に、民族のすべてが政治的勇気と誠実さを持たなければならない。それは困難な仕事であ り、時には痛みを乗り越えなければならないにちがいない。 ふたつの最新政治現象は、政治闘争がアイデンティティ政治の愚昧さを打破し、過去の諍 いに和解をもたらす力を持っていることを映し出す鏡として見直されるにふさわしい。そ のひとつは、マレーシア華人政党の民主行動党がマハティール・モハマド率いる希望連盟 を支援してナジブ・ラザク体制を崩壊させるのに貢献したことだ。与党の国民戦線を支持 するPAS(マレーシアイスラム党)党首は選挙キャンペーンで、民主行動党はイスラム 社会を敵視する者たちであると誹謗し、希望連盟のアジェンダはイスラムに沿うものでは ない、と非難していたのである。 もうひとつは、イラクのイスティコマ党とイラク共産党が総選挙に勝利し、両者が手を携 えて連合政府を樹立しようとしていることである。イスティコマ党を動かしているムクタ バ・アルサドルは高名な大ウラマのアヤトゥラ・ムハンマッ・サディッ・アルサドルの息 子だ。その父は60年前に共産主義と世俗主義の強硬な反対者だった。アラフアラム(神 のみぞ知る)。[ 完 ]