「スカルノ設計の建物があわや取り壊し」(2018年07月30日)

インドネシア初代大統領スカルノ工学士が設計した建物が無許可で改造工事されているこ
とが判明し、バンドン市当局が工事作業凍結を命じた。

その建物はバンドン市ガトッスブロト通り54番地にあるもので、市の歴史遺産に指定さ
れているため、建物改修は市の承認を得た上、専門家チームの指導下に工事を行わなけれ
ばならないのだが、建物オーナーはそれらの手続きをなにもせず、自分の考えに従って外
観と屋内改装に手を着けていた。

ガトッスブロト通りのその建物は向かい合って建てられた二つの建物のひとつで、市民は
そのペアーをツインビル(gedung kembar)と呼んでいる。建築は1935年で、住居やオ
フィスに使われてきた。現在のオーナーはそれを住居に使おうと考えて改造工事を開始し、
既に9割がた工事が終わっていたところ、史跡愛好市民によって発見され、今回の事件と
なった。

市側が状況の検証を行ったところ、元のまま残っているのは建物外壁、正面ファサード、
階段だけで、元々の壁はなくなり、屋根もなく、床タイルはすべてはがされ、新たな壁が
別途作られていて設計図から異なるものになっている由。


この歴史遺産の建物に異変が起こっているのを最初に報告したのはバンドン市の歴史愛好
家コミュニティに所属する33歳の男性。昔はときどきやってきて、建物内部で何かをし
たり、建物を観察したりできていたのに、あるとき訪れるとトタン板で周囲が閉鎖され、
中に入れなくなっていた。不審を抱いてその後の進展を見守っていると、そのうちに中の
建物の一部が取り壊されていることが明らかになったため、市当局に報告したとのことだ。

建物オーナーはその建物が規則で縛られていることを知らず、自分が住むために改造工事
を始めたと語り、すべて元の通りに戻すことを市側と約束した。バンドン市史跡専門家チ
ームのひとりは、「元通りの形に建て直されれば街並みの外観は何とか維持できるだろう。
しかし長い歴史を経た建物が持っているオーラを再現させるのは不可能だろう。」とコメ
ントしている。

バンドン市長はこの事件に関して、その建物は植民地時代の彩を濃く伝えているもののひ
とつであり、バンドン市街の特徴を支えている重要な要素のひとつだ、とコメントした。
「あの建物はアールデコ調のデザインで設計されており、当時の建築スタイルの流行に即
したものだ。バンドンには他にもそのトレンドに従った建物が数多い。われわれはバンド
ンの町の特徴付けを行うのに、そこに焦点を当てて市街をアールデコのオーラで包み込も
うと考えている。ところがなんと、正反対のことが起こってしまった。」と、市長は残念
そうな口ぶり。